GX志向型住宅とは?未来を継ぐ家づくりで実現する環境と暮らしの両立

はじめに:私たちが目指す「継ぐ」住宅づくり

こんにちは。神戸市西区を拠点にものづくり工務店「つむぎ建築舎」を運営する、株式会社四方継です。

私たちは創業以来、「人、街、暮らし、文化を継ぎ、四方良しを実現する」ことを理念として掲げてきました。この理念は、単に家を建てるだけではなく、住み手の皆さまの暮らし、そして地球環境の未来を見据えた家づくりを追求することを意味しています。

近年、建築業界では「GX志向型住宅」という新しい住宅の形が注目されています。GXとは「グリーントランスフォーメーション」の略で、温室効果ガスの排出削減と経済成長を両立させる取り組みのことです。つまりGX志向型住宅とは、環境に優しく、しかも住む人の生活も豊かにする、まさに次世代に継いでいくべき住宅なのです。

本記事では、私たちが長年取り組んできたGX志向型住宅について、その技術や実績、そして私たちの想いを詳しくお伝えします。これから家を建てようと考えている方、リフォームを検討されている方、そして環境に配慮した暮らしに興味がある方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。

GX志向型住宅の基本:環境と暮らしを両立させる家とは

GX志向型住宅について、まずは基本から説明しましょう。

この住宅の最大の特徴は、「高い断熱性能」と「高効率設備」を組み合わせることで、一次エネルギー消費量を大幅に削減することです。一次エネルギーとは、石油や天然ガス、太陽光など、自然から直接得られるエネルギーのこと。このエネルギー消費を減らすことが、温室効果ガス削減の鍵となります。

具体的には、家全体を高性能な断熱材でしっかりと包み込み、熱が逃げにくい構造にします。さらに、省エネ性能に優れた給湯器や換気システムを導入することで、日常生活で使うエネルギーを最小限に抑えます。そして、太陽光発電などの再生可能エネルギーを組み合わせることで、環境負荷をさらに低減させるのです。

ここで大切なのは、「省エネ」と「快適性」が決して相反するものではないということです。むしろ、高い断熱性能によって室温が一年中安定するため、夏は涼しく冬は暖かい、とても快適な住環境が実現します。エアコンの使用も最小限で済むため、光熱費の削減にもつながります。

私たちの経験では、GX志向型住宅にお住まいのお客様から、「冬でも朝起きたときに部屋が寒くない」「夏でもエアコンをほとんど使わなくても快適」といった声を多くいただいています。環境に優しいだけでなく、住む人の暮らしの質を高める。それがGX志向型住宅の本質なのです。

私たちの実績:国に認められた技術力

私たちがGX志向型住宅に本格的に取り組み始めたのは、実は2010年代初頭のことです。当時はまだ「GX」という言葉も一般的ではありませんでしたが、私たちはすでにゼロエネルギー住宅の開発に着手していました。

その成果が形になったのが、2012年です。私たちが開発した高性能ゼロエネルギー住宅「SUMIKA-ZERO(スミカゼロ)」が、国土交通省のゼロエネルギー推進化住宅に認定されました。これは国が定める厳しい基準をクリアした証であり、私たちの技術力が公的に認められたことを意味します。

SUMIKA-ZEROの開発で特に力を入れたのは、徹底的な断熱性能の追求でした。壁や床、天井だけでなく、窓や玄関ドアに至るまで、熱の出入りを最小限に抑える設計と施工を行いました。また、高効率なエアコンや給湯器、LED照明などを標準装備とし、エネルギー消費を大幅に削減することに成功したのです。

さらに私たちは、2012年から電磁波対策にも取り組んでいます。目に見えない電磁波は、現代の住環境における新たなストレス要因として注目されています。高性能住宅を追求する中で、私たちは住環境の「見えない部分」にも配慮することの重要性を認識し、独自の電磁波対策技術を開発してきました。

これらの取り組みは、単なる省エネルギー化だけではなく、住む人の健康と快適性を総合的に考えた結果です。特に共働き世帯が増える現代では、家事のストレス軽減も重要なテーマです。高い断熱性能によって室温が安定すれば、洗濯物の乾きも早く、結露によるカビの心配も減ります。こうした日常の小さなストレスが軽減されることで、住まいは「時短を叶えるサバイバルツール」にもなるのです。

現場で実現する高度な技術:見えない部分へのこだわり

図面上でいくら優れた設計をしても、それを現場で正確に実現できなければ意味がありません。GX志向型住宅の性能を保証するのは、職人たちの高度な技術力です。

現在工事中の「スキップの家」の現場では、断熱気密工事が進行中です。この工程では、わずかな隙間も許されません。隙間があると、そこから空気が出入りし、せっかくの断熱性能が台無しになってしまうからです。私たちの職人は、一つ一つの接合部を丁寧にチェックしながら、ミリ単位の精度で施工を進めています。

特に印象的だったのは、愛知県で工事を進めている歯科クリニックの現場です。ここでは伝統的な「木摺り(きずり)」という技法を採用しました。木摺りとは、柱の両側に細い木を細かいピッチで留めていく左官の下地のことです。最終的には土壁で覆われて見えなくなってしまうのですが、その美しい格子模様を見たとき、スタッフ一同が「隠れてしまうのがもったいない」と感じたほどでした。

このエピソードは、私たちの家づくりの姿勢を象徴しています。完成後に見えなくなる部分にこそ、手を抜かずに丁寧な仕事をする。これこそが、何十年、何世代にもわたって受け継がれる価値のある住宅をつくる基本だと、私たちは信じています。

また、この歯科クリニックの内部には、天然乾燥の愛知県産杉材をふんだんに使用しています。現場に立つと、まるで自分が木の中に入ったような感覚になるほど、温かみのある空間が広がっています。こうした自然素材の活用は、環境負荷を減らすだけでなく、そこで過ごす人々の心にも豊かさをもたらすのです。

さらに私たちは、国際的な協働プロジェクトにも挑戦しています。もるくす建築社の佐藤氏、そしてスイスのN11 Architektenとの連携による「KANSO構法」のプロジェクトでは、国境を越えた知見を取り入れた先進的な構法に取り組んでいます。また、現在進行中の別のプロジェクトでは、日本国内でもまだ3棟目となる特殊な構法に挑戦しています。私たち自身も手探りで進めている部分が多く、たくさんの方々の協力をいただきながら、一歩ずつ前に進んでいます。

資源を無駄にしない設計思想

GX志向型住宅では、使用する材料の選び方や使い方も重要です。

先ほど触れた愛知県の歯科クリニックでは、地元の杉材を活用しています。地域で育った木材を使うことで、輸送にかかるエネルギーを削減できるだけでなく、地域経済の活性化にも貢献できます。また、天然乾燥の木材は、人工乾燥に比べてエネルギー消費が少なく、木本来の風合いや香りも保たれています。

材料の使い方にも工夫があります。先日、お客様のご要望でコンパクトなワークデスクを製作した際のことです。私たちは3×6判(910ミリ×1820ミリ)の合板1枚から、必要な部材を無駄なく切り出す「木取り」という技術を駆使しました。この木取りは、経験と計算力が求められる専門的な技術です。デスクの天板、脚、棚板など、すべての部材を一枚の合板から効率的に切り出すことで、材料の無駄を最小限に抑えることができました。

こうした一つ一つの取り組みは小さなことかもしれません。しかし、家一軒を建てる過程では、無数の材料選定や加工が行われます。それぞれの工程で資源を大切にする意識を持つことが、結果として大きな環境負荷の削減につながるのです。

次世代を育てる私たちの使命

GX志向型住宅のような高度な住宅を継続的に提供していくためには、優れた技術者を育成することが不可欠です。私たちは、自社の事業だけでなく、業界全体の未来を見据えた教育活動にも力を入れています。

2013年、私たちは「職人起業塾」を開講しました。これは当初、社員大工のキャリアアップと地域の職人の活性化を目的としたものでした。しかし、その意義が認められ、2016年には一般社団法人として法人化され、全国展開されるまでになりました。

この塾の特徴は、単に独立開業を支援するのではなく、「イントラプレナーシップ」という社内起業家精神を育むことにあります。つまり、職人が組織の中で経営的な視点を持ちながら、自立したプロフェッショナルとして活躍できる人材を育てることを目指しているのです。GX志向型住宅のような複雑な要求に応える家づくりには、高い技術力だけでなく、全体を見渡せる経営感覚も必要です。

さらに2023年4月には、「マイスター高等学院」を設立・開校しました。これは通信制の高校で、高校卒業資格を取得しながら、大工などの専門技術を学べる画期的な教育機関です。

なぜこのような学校を作ったのか。それは、現在の日本が深刻な職人不足に直面しているからです。しかし私たちは、通常の高校教育では見過ごされがちな、ものづくりの才能を持つ若者たちがたくさんいると信じています。マイスター高等学院は、そうした隠れた才能を見つけ、開花させる場所なのです。

学院では、実際の現場で先輩職人から直接指導を受けながら、段階的に技術を身につけていきます。座学だけでは得られない、材料の感触、道具の使い方、現場の空気感。こうした実践的な学びを通じて、次世代の職人が育っています。

地域と共に歩む企業として

私たちの事業は、単に住宅を建てることだけではありません。地域社会、環境、協力会社を含めた「四方」すべてに良しをもたらすことを目指しています。

2020年、私たちは社名を「株式会社四方継」に変更しました。この社名には、「地域を守り、次世代に継なげる事業」を展開するという強い決意が込められています。そしてその取り組みが評価され、2022年には一般社団法人日本未来企業研究所より「未来創造企業」として認定されました。

私たちが大切にしているのは、協力会社とのパートナーシップです。偶数月に開催している研修会「継塾」では、社会課題解決型ビジネス(CSVモデル)をテーマにしたダイアログを行っています。例えば、ゴミ収集運搬業の事例を取り上げ、廃棄物処理という社会的な課題をビジネスの視点から考える機会を設けました。

GX志向型住宅も、まさに社会課題解決型の取り組みです。温室効果ガスの削減という環境課題に対して、住宅という商品を通じて貢献する。そして同時に、住む人の暮らしを豊かにし、建築に関わる職人たちの誇りを高め、協力会社と共に成長する。これが私たちの考える「四方良し」です。

お客様との信頼関係:丁寧なコミュニケーションから生まれる家

どれだけ高い技術があっても、それをお客様の想いと結びつけなければ、本当に満足いただける家は生まれません。私たちが最も大切にしているのは、お客様との丁寧なコミュニケーションです。

私たちの強みは、女性建築設計士と大工が直接お客様と対話しながら家づくりを進めることです。女性設計士ならではの生活者目線と、大工の現場経験に基づく実践的な提案。この二つが組み合わさることで、お客様ご自身もまだ気づいていない潜在的な望みを形にすることができます。

例えば、「スキップの家」のプロジェクトでは、地鎮祭の日取りを決める際に、建築吉日を丁寧に選定しました。そして神主様に四方を祓っていただくという伝統的な儀式も大切にしました。また、上棟前にはお客様と一緒に「しそうの森の木」さんを訪れ、実際に使用する木材の製材やプレカットの現場を見学していただきました。

こうしたプロセスの見える化は、お客様に安心感を提供するだけでなく、家づくりへの理解と愛着を深めていただくことにつながります。完成した家は、単なる建物ではなく、お客様と私たちが共に創り上げた「作品」となるのです。

また、私たちは2009年より、無料巡回メンテナンスサービスを提供しています(神戸近郊に限られますが)。「すべてのお客様に生活の安心・安全を」を合言葉に、定期的にお客様の家を訪問し、不具合がないかチェックしています。家を建てた後も、何十年にわたって住み続けていただくために、私たちは長期的なサポートを約束します。

まとめ:未来を継ぐ家づくりへの想い

GX志向型住宅とは、温室効果ガスの排出削減と経済成長を両立させる家づくりです。それは私たち株式会社四方継が長年培ってきた技術と、地域社会への責任感が結実したものです。

私たちが目指す「四方良し」とは、以下の四つです。

まず「住み手良し」。高性能・高効率な住宅によって、光熱費の負担が少なく、健康で快適な暮らしを何十年にもわたって提供します。

次に「作り手良し」。特殊な構法や精密な気密工事など、高度な技術に挑戦することで、職人たちが誇りを持って技術を継承できる環境を整えます。

そして「協力会社良し」。社会課題解決型ビジネスの探求や継塾を通じて、パートナー企業と共に持続可能な事業モデルを追求します。

最後に「地域社会良し」。地域の環境負荷を減らし、未来創造企業として、次世代に良い街を継いでいきます。

私たちはこれからも、「つむぎ建築舎」の技術力と「つない堂」の地域ネットワークを活かしながら、GX志向型住宅を一つのスタンダードとして普及させていきます。それは単なる住宅の販売ではなく、持続可能で豊かな社会を次世代に継いでいくという、私たちの使命でもあります。

これから家を建てようと考えている方、リフォームを検討されている方。ぜひ一度、私たちにご相談ください。お客様の暮らしと地球の未来を共に考える家づくりを、一緒に始めませんか。

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