断熱気密工事-空気が漏れないよう徹底的に施工する技術

こんにちは、株式会社四方継です。

今回は、なぜ気密施工がこれほどまでに重要なのか、そして私たちがどのようにして高精度な施工を実現しているのかを、現場の様子とともに詳しくお伝えします。

なぜ気密施工が住宅の未来を決めるのか

断熱気密性能は、住宅の快適性、耐久性、そしてエネルギー効率のすべてを左右する重要な要素です。私たちが「すき間ゼロ」にこだわるのには、明確な理由があります。

エネルギー効率を根本から変える技術

わずかな隙間も許さない高気密施工は、住宅内部と外部との熱交換を防ぎます。これは冬場の暖房や夏場の冷房が、隙間から逃げていくことを防ぐということです。

実は、気密性の低い住宅では、暖めた空気や冷やした空気が隙間から漏れ出してしまい、エネルギーを無駄に消費してしまいます。例えば、古い住宅で「いくら暖房をつけても足元が寒い」という経験はありませんか。これは隙間から冷気が入り込み、暖かい空気が逃げている証拠なのです。

私たちが推進するGX志向型住宅、つまり温室効果ガスの排出削減と経済成長の両立を実現する住宅づくりにおいて、高気密施工は欠かせません。高い断熱性能と高効率設備の導入により、一次エネルギー消費量を削減し、さらに太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用するための土台となります。

この取り組みは、私たちの長年の実績に裏付けられています。2012年には、当社が開発した高性能ゼロエネルギー住宅「SUMIKA-ZERO(スミカゼロ)」が、国土交通省のゼロエネルギー推進化住宅に認定されました。この認定を受けた技術力こそが、現場での高精度な断熱気密施工を可能にしているのです。

快適性と健康を守るための基盤技術

高気密高断熱の住宅は、省エネだけでなく、住む方の健康と快適性に直結します。

隙間からの冷気や暖気の侵入を防ぐことで、室内の温度差を極限まで減らすことができます。これは、冬場のヒートショックのリスクを大幅に低減することにつながります。ヒートショックとは、暖かい部屋から寒い廊下やトイレに移動したときに、急激な温度変化で血圧が変動し、心臓や血管に負担がかかる現象です。特に高齢の方にとって、これは命に関わる重大なリスクとなります。

また、高気密性能は、高性能な換気システムと組み合わせることで、室内の湿度を適切に保ち、カビや結露を防ぎます。現代の暮らしでは、室内干しをメインにされるご家庭が増えています。共働き世帯にとって、時短をかなえるサバイバルツールとして室内干しの優先度が高まっているからです。気密性能が高い住宅では、換気システムが効率的に働き、洗濯物も快適に乾かすことができます。

「スキップの家」で実践する高精度施工プロセス

「スキップの家」の現場で実践されている断熱気密工事は、単なる作業ではありません。専門家としての提案、計画、そして職人の美意識が統合されたプロセスなのです。

見えない部分にこそ宿る職人の美意識

気密施工の成功は、職人が「見て安心、さわって安心」できる品質へのこだわりを、見えない部分にまで徹底できるかにかかっています。

私たちは、「受け継がれる価値のある丁寧なものづくり」をビジョンとしています。この丁寧さは、断熱材の充填や気密テープの施工といった、最終的に壁や天井に隠れてしまう部分でこそ徹底されます。

以前、愛知県の歯科クリニックの現場では、左官の下地である「木摺り(きずり)」という作業を行いました。木摺りとは、壁に漆喰などの左官材を塗る前に、細い木材を格子状に組んでいく伝統的な工法です。この木摺りは、最終的に左官材に覆われて見えなくなってしまいます。

しかし、職人たちは「隠れてしまうのがもったいないくらい」の美意識をもって施工しました。なぜなら、見えない部分の精度こそが、最終的な仕上がりの品質を左右すると知っているからです。

断熱気密工事も同じです。完成後は壁の中に隠れてしまいますが、だからこそ、一切の妥協を許しません。断熱材のわずかな隙間も、気密テープの貼り方のわずかなズレも、すべてが住宅性能に影響します。見えない部分にも手を抜かないという倫理観こそが、気密施工の精度を保証するのです。

また、現場で資源を効率的に活用する技術も重要です。造作家具の製作では、3×6判の合板1枚からなるべく無駄のないように部材を取る「木取り」という専門技術を用います。この技術は、材料を最大限に活かし、緻密に施工するノウハウの一つです。気密施工においても、このような細やかな配慮が随所に活かされています。

お客様と一緒に歩む透明性の高い家づくり

高精度な断熱気密工事への挑戦は、お客様との透明性の高いコミュニケーションによって支えられています。

私たちは、「専門家としての提案・計画から施工プロセスの見える化」を徹底しています。建築の専門知識がないお客様でも、自分たちの家が確実に高性能で造られているという安心感を得られるようにすることが、私たちの使命だと考えています。

「スキップの家」では、上棟前にお施主様と一緒に、この家の材木を製材・プレカットしてくださっている「しそうの森の木」さんを訪問しました。使用する主要な資材の出所と加工プロセスをお客様と共に確認することで、家づくりへの信頼感を深めていただけます。

また、地鎮祭は「建築吉日」を選定し、神主様に四方を祓っていただく形でおごそかに執り行われました。お施主様からは「大事なイベントごとはいつもいいお天気に恵まれる」という嬉しいお言葉をいただきました。このような一つひとつの儀式や節目を大切にすることも、家づくり全体を大切にする私たちの姿勢の表れです。

組織全体で支える技術力と人材育成

高精度な断熱気密施工は、現場の職人の能力だけでなく、組織全体で技術と教育に投資し続けていることによって支えられています。

未来の担い手を育てる教育事業

私たちが提供する高精度の技術は、未来の担い手を育成する教育事業によって保証されています。

2023年4月に設立・開校した「マイスター高等学院」は、高校卒業の資格を取りながら大工など建設業における「職人」としての技術を身につけることを可能にする通信制高校です。これは、断熱気密工事のような高度な技術を確実に次世代に継承していくための、長期的な取り組みです。

建築業界では、熟練職人の高齢化が進んでいます。技術を持った職人が引退する前に、その技術を若い世代に伝えていかなければ、日本の伝統的な建築技術は失われてしまいます。マイスター高等学院は、この課題に正面から向き合い、若い世代に学びの場を提供しています。

また、2013年に開講し、2016年に一般社団法人として全国展開した「職人起業塾」は、職人の「イントラプレナーシップという社内起業家精神の醸成」を目的としています。イントラプレナーシップとは、組織の中で起業家のように主体的に行動し、新しい価値を生み出す精神のことです。

この精神を持つ職人は、断熱気密工事が住宅の性能に直結することを深く理解し、最高の品質を目指して作業にあたります。単に言われたことをこなすのではなく、「どうすればもっと良くなるか」を常に考えながら施工するのです。

新しい挑戦が磨く専門技術

断熱気密工事の専門性は、私たちが新しい構法にも果敢に挑戦し続けていることによって磨かれています。

現在、私たちは日本国内でも3棟目となる、まだ一般的には広く知れ渡っていない構法を用いた新しいプロジェクトにも挑戦しています。私たち自身も「始めてのことだらけで、手探りで少しずつ進めている状態」ですが、こうした難易度の高い挑戦が、標準的な高性能住宅における気密施工の精度をさらに高めています。

新しい技術に挑戦することで、既存の技術をより深く理解できるようになります。また、スイスのN11 Architektenや、もるくす建築社の建築家との連携によるKANSO構法への取り組みなど、国際的な知見を取り入れる姿勢も、私たちの技術的な専門性の幅広さを示しています。

海外の建築技術には、日本とは異なる気候や文化に適応した独自の工夫があります。それらを学び、日本の気候風土に合わせて応用することで、より高度な技術を生み出すことができるのです。

建てた後も続く安心のサポート体制

「スキップの家」で行われている高精度な断熱気密施工は、その後の暮らしにおける長期的な安心を約束するものです。

何十年も続く無料メンテナンスサービス

断熱気密性能は、施工時だけでなく、何十年も維持されなければ意味がありません。

私たちは2009年より、「すべてのお客様に生活の安心・安全を」を合言葉に、無料巡回メンテナンスサービスを本格化させています(神戸近郊に限ります)。この長年にわたるサポート体制こそが、高気密住宅を建てた後の暮らしの安心を保証しています。

定期的にお伺いして、気密性能に影響を与えるような劣化がないかをチェックします。小さな不具合も早期に発見し、対処することで、住宅の性能を長期間維持することができます。

お客様からは「建てた後も見守ってくれるから安心」「気軽に相談できるのがありがたい」といった声をいただいています。家は建てて終わりではなく、長く住み続けていくものです。だからこそ、建てた後のサポートを大切にしています。

社会からの評価と地域貢献活動

企業の活動全体が社会から認められていることが、お客様への最大の信頼となります。

2022年には、一般社団法人日本未来企業研究所より「未来創造企業」として認定されました。これは、私たちが「地域を守り次世代に継なげる事業を目指す」という理念のもと、健全な事業運営を行っていることの証です。

また、私たちは地域行政からの声かけにより「伊川リバーフェスタ」や「西区もくいく」に参加したり、情報誌「つないどう?」で大工が泊まり込んで行った「能登半島輪島市黒島地区【重要伝統的建築物】修復レポート」を特集したりするなど、地域社会への貢献にも積極的に取り組んでいます。

能登半島での修復活動では、被災した伝統的建築物の修復に携わりました。歴史ある建築物を未来に残していくことも、私たちの使命だと考えています。こうした活動を通じて、職人の技術力を高めるとともに、社会への責任を果たしています。

受け継がれる価値を生み出す気密施工

この高精度な気密施工技術は、国土交通省認定の実績と、職人起業塾やマイスター高等学院による人材育成によって支えられています。そして、女性建築設計士と大工による細やかなコミュニケーションと、施工プロセスの見える化を通じて、お客様に「見て安心、さわって安心」できる形で提供されています。

私たちは、「人、街、暮らし、文化を継ぎ、四方良しを実現する」ことを企業理念としています。四方良しとは、お客様良し、地域良し、職人良し、会社良しという考え方です。この理念を実現するために、高精度な気密施工という基礎的な技術を徹底的に追求しています。

断熱気密工事は、完成すると見えなくなってしまう部分です。しかし、この見えない部分の品質こそが、住宅の快適性、健康性、経済性のすべてを決定します。だからこそ、私たちは一切の妥協を許さず、職人一人ひとりが美意識を持って施工にあたっているのです。

「スキップの家」は、今後何十年にもわたり、お客様にとって快適で経済的、そして健康的な暮らしの基盤となります。私たちは、これからも最高の専門性と技術をもって、お客様の未来を継ぐ家づくりに邁進してまいります。

神戸市西区を拠点とする私たちは、地域に根ざした家づくりを続けています。もし、高性能な住宅づくりにご興味がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。現場見学も随時受け付けております。実際に施工中の現場をご覧いただくことで、私たちの丁寧なものづくりへのこだわりを肌で感じていただけると思います。

ページの先頭へ