創業20周年で社名を「株式会社四方継」に変更した理由とは?理念の結晶化と未来への想い

こんにちは。株式会社四方継です。

2020年、私たちは創業20周年という大きな節目を迎え、有限会社すみれ建築工房から「株式会社四方継」へと社名を変更いたしました。今日は、なぜこのタイミングで社名を変更したのか、その背景にある想いと、これから目指す未来についてお話しさせていただきます。

社名変更に込めた決意

「なぜ今のタイミングで社名を変えるのか?」

この質問は、社名変更を決めた際、社内外から何度も受けたものです。20年という長い歴史の中で親しまれてきた「すみれ建築工房」という名前を変えることは、決して軽い決断ではありませんでした。

しかし、私たちにとってこの社名変更は、単なる名前の変更ではありません。これまで20年以上にわたって培ってきた私たちの信念を、明確な形にして表現したものなのです。

その信念とは、「人、街、暮らし、文化を継ぎ 四方良しを実現する」という理念です。

この理念は、私たちがこれまで歩んできた道のりの中で自然と生まれ、そして確固たる信念として根付いてきました。2020年、創業20周年という節目に、これまでの活動を振り返り、これから目指す未来を見据えたとき、この理念を社名として掲げることが最も誠実な表現だと確信したのです。

「四方良し」という考え方

「四方継」という名前には、関わるすべての人々が幸せになることを目指す想いが込められています。

建築業界では、ともすれば作り手の論理だけで物事が進んでしまうことがあります。しかし、私たちが本当に目指すべきは、作り手と住み手だけでなく、協力会社や地域社会も含めた「四方良し」の状態を作り出すことだと考えています。

「四方」が指すもの

「四方」とは、私たちの事業活動に関わるすべてのステークホルダーを表しています。

一つ目は「作り手」です。 これは私たち四方継をはじめ、建築に携わる職人や企業のことです。技術を磨き、誇りを持って仕事に取り組む私たちが、やりがいを感じながら持続的に事業を続けられる環境が必要です。

二つ目は「住み手」です。 実際にその建物で暮らし、働く方々のことです。快適で安全な空間で過ごしていただくこと、そして世代を超えて受け継がれる価値ある建築を提供することが私たちの使命です。

三つ目は「協力会社」です。 一つの建物を完成させるには、電気工事、水道工事、左官工事など、多くの専門業者の力が必要です。それぞれの分野のプロフェッショナルたちが適正な対価を得て、やりがいを持って仕事ができる関係性を築くことが重要です。

四つ目は「地域社会」です。 建物はその地域の一部となり、街の景観や経済活動に影響を与えます。地域の皆様との良好な関係なくして、持続可能な事業は成り立ちません。

この四つの主体すべてが満足し、利益を得られる状態を「四方良し」と呼んでいます。これは近江商人の「三方良し」(売り手良し、買い手良し、世間良し)の考え方を、現代の建築業界に適用し、さらに発展させたものです。

理念実現への道のり

私たちの歴史を振り返ると、1994年に神戸市西区大津和で創業した「大工集団 高橋組」が始まりでした。その後、2001年に設立、2002年に有限会社すみれ建築工房として組織変更し、長年にわたって地域の皆様に支えられてまいりました。

この20年の間、私たちは様々な挑戦を続けてきました。

2003年には元請中心の営業への転換を図りました。これは、お客様と直接向き合い、本当に求められている価値を提供するためです。

2007年には規格化注文住宅「sumika」を開発しました。これは、品質の安定と効率化を両立させながら、お客様一人ひとりのニーズに応えるための取り組みでした。

これらの活動は、常に住み手と作り手の満足度を高めることを目指してきました。しかし、2020年の社名変更により、私たちはこれらの活動をより広い視点から捉え直したのです。それが「四方良し」という考え方です。

「人を継ぐ」ための取り組み

社名変更の背景には、特に「人」を次世代に継承するための長年の取り組みがありました。

職人起業塾の開講

建築の品質、つまり「受け継がれる価値のある丁寧なものづくり」の根幹は、作り手である職人にあります。しかし、近年の建築業界では職人不足が深刻な問題となっています。

この課題に対応するため、私たちは2013年に社員大工のキャリアアップと地域の職人の活性化を目的とした「職人起業塾」を開講しました。

ここで重要なのは、職人起業塾は独立開業を促すためのものではないということです。これは、社内起業家精神、いわゆる「イントラプレナーシップ」の醸成を目的とした研修なのです。

職人が単なる技術者ではなく、経営的視点を持ったプロフェッショナルとして成長することで、自分の仕事に対する誇りと責任感がさらに高まります。また、会社全体の事業を理解し、主体的に考え行動できる人材を育成することで、組織全体の活性化にもつながります。

この取り組みは予想以上の反響を呼び、2016年には一般社団法人職人起業塾として法人化し、全国展開することになりました。代表である高橋剛志が目指すのは「モノづくりの担い手を子供の憧れの職業にすること」です。

昔は「職人さん」と言えば、地域で尊敬される存在でした。しかし、いつの間にか「きつい、汚い、危険」の3Kと言われるようになってしまいました。私たちはこの状況を変えたいと強く願っています。

マイスター高等学院の設立

さらに、建築業界の「職人不足」の加速という社会課題に歯止めをかけるため、2023年にマイスター高等学院を設立し、4月より開校いたしました。

マイスター高等学院は、高校卒業の資格を取りながら、大工など建設業における「職人」としての技術を身につけることのできる通信制高校です。

従来の教育システムでは、学力だけで評価されがちですが、実際には手に職を持つことに向いている子どもたちもたくさんいます。そうした子どもたちに、職人という誇りある職業への道を提供したいと考えています。

この学校は、通常の学校では隠れてしまっている才能を見つけ、開花させる場として機能させたいと考えています。将来、この学校を卒業した生徒たちが、建築業界の新しい担い手として活躍してくれることを願っています。

「文化を継ぐ」ための学び

「文化を継ぐ」という観点から、私たちは継塾という勉強会を継続的に開催しています。ここでは持続可能なビジネスモデルの探求をテーマに、特にCSVモデル(社会課題解決型ビジネス)に焦点を当てた議論を行っています。

CSVとは「Creating Shared Value(共通価値の創造)」の略で、企業が社会課題を解決しながら、同時に経済的価値も創造するビジネスモデルのことです。これはまさに「四方良し」の考え方と一致します。

偶数月には参加者のビジネスモデルをブラッシュアップする「ホットシート」も実施しており、互いに学び合う文化を大切にしています。

「暮らしを継ぐ」ための安心・安全

私たちは、住み手が世代を超えて受け継がれる価値ある建築を実現することを目指しています。そのため、建築物の性能と、それを取り巻く生活の質の両方に注目してきました。

高性能住宅への取り組み

2012年には、高性能ゼロエネルギー住宅「SUMIKA-ZERO(スミカゼロ)」が国土交通省のゼロエネルギー推進化住宅に認定されました。これは省エネルギーで快適な住宅技術の継承と進化に努めた結果です。

同年からは電磁波対策の取り組みも開始しました。現代社会では、スマートフォンやWi-Fiなど、私たちの周りには多くの電子機器があります。これらから発生する電磁波が健康に与える影響を心配される方も増えているため、対策を講じています。

アフターサービスの充実

また、2009年には「すべてのお客様に生活の安心・安全を」を合言葉に、無料巡回メンテナンスサービスを本格化しました。無料巡回エリアは神戸近郊に限られますが、建築後も継続的に住まい手の安心を保証する取り組みです。

「家を建てて終わり」ではなく、その後も長く快適に住んでいただくためのサポートを続けることで、「暮らしを継ぐ」という理念を具体的な行動で示しています。

「街を継ぐ」ためのネットワーク構築

社名変更を機に、私たちは「つない堂」という新たな取り組みを本格化させました。これは、すみれ暮らしの学校の活動を発展的に移行させたものです。

つない堂のビジョンは「人を繋ぎ、ご縁を紡ぎ、いい街を継ぐ」です。

信頼の輪を広げる

つない堂の役割は、信頼の輪を広げ、検索不要の安心安全な地域社会を作ることです。現代社会では、何かサービスが必要になったとき、多くの人がインターネットで検索します。しかし、検索結果が本当に信頼できるかどうかは分からないことが多いのが現実です。

そこで、私たちは各分野で卓越した知見を持つ「人」「事業所」「サービス」を発掘し、リアルなネットワークを構築しています。例えば、優秀な税理士さん、信頼できる病院、美味しいレストランなど、実際に私たちが関わってよかったと思える人や事業所を紹介するのです。

このようにして、インターネット検索を必要としない安心な循環地域型社会のハブとなり、いい街を次世代に継ぐことを目指しています。

社名変更後の評価と認定

2020年に「四方継」として生まれ変わった後も、理念実現に向けた歩みは止まることがありません。

社名変更から2年後の2022年、株式会社四方継は一般社団法人日本未来企業研究所より「未来創造企業」として認定されました。これは、「人、街、暮らし、文化を継ぎ 四方良しを実現する」という理念と、それに伴う事業の革新性が外部からも評価されたことを示しています。

この認定は、私たちにとって大きな励みとなりました。同時に、理念を実現するための責任がより重くなったとも感じています。

私たちが目指す未来

建築業界は、これまで作り手の論理で動くことが多い業界でした。しかし、本当に大切なのは、住み手の幸せです。そして、その幸せを実現するためには、作り手である私たちも充実していなければなりません。協力会社の皆様との信頼関係も不可欠です。地域社会の理解と協力なくしては、持続可能な事業は成り立ちません。

この四つの要素すべてがバランス良く満たされたとき、初めて「四方良し」の状態が実現します。そして、その状態を次の世代に「継ぐ」ことができるのです。

2020年の社名変更は、この理念を明確にし、社内外に宣言するためのものでした。私たちは単なる建築事業者ではなく、「人、街、暮らし、文化を継ぐ」ことをミッションとする、未来志向の「建築×地域活性化」企業として、新たなスタートを切ったのです。

おわりに

「四方継」という社名に込めた想いは、決して理想論ではありません。これまでの歴史と経験に基づいた、実現可能な未来への道筋です。

私たちはこれからも、この理念を胸に、一歩一歩着実に歩み続けてまいります。私たちの取り組みが、建築業界全体の発展と、地域社会の活性化に少しでも貢献できれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。四方継の想いが皆様に伝わりましたでしょうか。これからも、「四方良し」の実現に向けて努力を続けてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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