こんにちは。株式会社四方継です。
今日は、なぜ私たちが2020年に社名を「四方継」に変更したのか、その背景にある深い想いをお話ししたいと思います。
社名変更に込めた壮大なビジョン
2020年、創業20周年という大きな節目を迎えた私たちは、有限会社すみれ建築工房から「株式会社四方継」へと社名を変更しました。
「なぜ今のタイミングで?」と思われる方も多いでしょう。実は、この社名変更は単なる名前の変更ではありません。これまで20年以上にわたって培ってきた私たちの信念を、明確な形にして表現したものなのです。
その信念とは、「人、街、暮らし、文化を継ぎ 四方良しを実現する」という理念です。この理念は、私たちがこれまで歩んできた道のりの中で自然と生まれ、そして確固たる信念として根付いてきたものです。
「四方継」という名前には、関わるすべての人々が幸せになることを目指す想いが込められています。建築業界では、作り手と住み手だけでなく、協力会社や地域社会も含めた「四方良し」の状態を作り出すことが、本当の意味での成功だと私たちは考えています。
社名変更は、地域を守り次世代に継なげる事業を目指すという強い決意の表れでもありました。建築という仕事は、ただ建物を建てるだけではなく、その地域の文化や人々の暮らしを支える重要な役割を担っているのです。
「四方良し」の理念を明確にした背景
私たちの歴史を振り返ると、1994年に神戸市西区大津和で創業した「大工集団 高橋組」が始まりでした。その後、2001年に設立、2002年に有限会社すみれ建築工房として組織変更し、長年にわたって地域の皆様に支えられてきました。
2020年の社名変更は、この長い歴史を振り返り、私たちの存在意義を改めて問い直すきっかけとなりました。そして辿り着いたのが「四方良し」という考え方です。
「四方」とは何を指すのでしょうか。これは、私たちの事業活動に関わるすべての人々を表しています。
まず「作り手」。これは私たちのような建築に携わる職人や企業のことです。技術を磨き、誇りを持って仕事に取り組む人たちです。
次に「住み手」。実際にその建物で暮らし、働く人たちのことです。快適で安全な空間で過ごす権利を持つ大切なお客様です。
そして「協力会社」。一つの建物を完成させるには、多くの専門業者の力が必要です。電気工事、水道工事、左官工事など、それぞれの分野のプロフェッショナルたちです。
最後に「地域社会」。建物はその地域の一部となり、街の景観や経済活動に影響を与えます。地域の皆様との良好な関係なくして、持続可能な事業は成り立ちません。
この四つの主体すべてが満足し、利益を得られる状態を「四方良し」と呼んでいます。これは近江商人の「三方良し」(売り手良し、買い手良し、世間良し)の考え方を現代の建築業界に適用し、さらに発展させたものです。
創業以来、私たちは元請中心の営業への転換(2003年)や規格化注文住宅「sumika」の開発(2007年)など、住み手と作り手の満足度を高める取り組みを続けてきました。しかし、2020年の社名変更により、これらの活動をより広い視点から捉え直したのです。
人と文化を継承する取り組み
社名変更の背景には、特に「人」と「文化」を次世代に継承するための長年の取り組みがありました。
建築の品質、つまり「受け継がれる価値のある丁寧なものづくり」の根幹は、作り手である職人にあります。しかし、近年の建築業界では職人不足が深刻な問題となっています。
この課題に対応するため、私たちは2013年に社員大工のキャリアアップと地域の職人の活性化を目的とした「職人起業塾」を開講しました。これは単に技術を教えるだけでなく、職人が自律した事業家としての視点を持つことを促す画期的な取り組みでした。
職人起業塾では、技術指導だけでなく経営に関する知識も教えています。「なぜ経営を学ぶ必要があるのか?」と疑問に思われるかもしれません。それは、職人が単なる技術者ではなく、自分の仕事に誇りと責任を持つプロフェッショナルになってほしいからです。
この取り組みは予想以上の反響を呼び、2016年には一般社団法人職人起業塾として法人化し、全国展開することになりました。代表である高橋剛志が目指すのは「モノづくりの担い手を子供の憧れの職業にすること」です。
昔は「職人さん」と言えば、地域で尊敬される存在でした。しかし、いつの間にか「きつい、汚い、危険」の3Kと言われるようになってしまいました。私たちはこの状況を変えたいのです。
また、「文化を継ぐ」という観点から、継塾という勉強会も継続的に開催しています。ここでは持続可能なビジネスモデルの探求をテーマに、特にCSVモデル(社会課題解決型ビジネス)に焦点を当てた議論を行っています。
CSVとは「Creating Shared Value(共通価値の創造)」の略で、企業が社会課題を解決しながら、同時に経済的価値も創造するビジネスモデルのことです。これはまさに「四方良し」の考え方と一致します。
偶数月には参加者のビジネスモデルをブラッシュアップする「ホットシート」も実施しており、互いに学び合う文化を大切にしています。
暮らしと街への長期的なコミットメント
「四方継」への社名変更は、住み手の暮らしと地域社会への長期的な責任を明確に示すものでもありました。
暮らしの安心・安全への取り組み
私たちは、住まい手が世代を超えて受け継がれる価値ある建築を実現することを目指しています。そのため、建築物の性能と、それを取り巻く生活の質の両方に注目してきました。
2012年には、高性能ゼロエネルギー住宅「SUMIKA-ZERO(スミカゼロ)」が国土交通省のゼロエネルギー推進化住宅に認定されました。これは省エネルギーで快適な住宅技術の継承と進化に努めた結果です。
同年からは電磁波対策の取り組みも開始しました。現代社会では、スマートフォンやWi-Fiなど、私たちの周りには多くの電子機器があります。これらから発生する電磁波が健康に与える影響を心配される方も増えているため、対策を講じているのです。
また、2009年には「すべてのお客様に生活の安心・安全を」を合言葉に、無料巡回メンテナンスサービスを本格化しました。ただし、無料巡回エリアは神戸近郊に限られますが、建築後も継続的に住まい手の安心を保証する取り組みです。
「家を建てて終わり」ではなく、その後も長く快適に住んでいただくためのサポートを続けることで、「暮らしを継ぐ」という理念を具体的な行動で示しています。
街の信頼ネットワーク構築
もう一つの重要な取り組みが「つない堂」です。これは「人を繋ぎ、ご縁を紡ぎ、いい街を継ぐ」というビジョンを具現化する事業です。
つない堂の役割は、信頼の輪を広げ、検索不要の安心安全な地域社会を作ることです。現代社会では、何かサービスが必要になったとき、多くの人がインターネットで検索します。しかし、検索結果が本当に信頼できるかどうかは分からないことが多いのが現実です。
そこで、私たちは各分野で卓越した知見を持つ「人」「事業所」「サービス」を発掘し、リアルなネットワークを構築しています。例えば、優秀な税理士さん、信頼できる病院、美味しいレストランなど、実際に私たちが関わってよかったと思える人や事業所を紹介するのです。
このようにして、インターネット検索を必要としない安心な循環地域型社会のハブとなり、いい街を次世代に継ぐことを目指しています。
社名変更後の成長と進化
2020年に「四方継」として生まれ変わった後も、理念実現に向けた歩みは止まることがありません。
未来創造企業としての認定
社名変更から2年後の2022年、株式会社四方継は一般社団法人日本未来企業研究所より「未来創造企業」として認定されました。これは、「人、街、暮らし、文化を継ぎ 四方良しを実現する」という理念と、それに伴う事業の革新性が外部からも評価されたことを示しています。
この認定は、私たちにとって大きな励みとなりました。同時に、理念を実現するための責任がより重くなったとも感じています。
マイスター高等学院の設立
建築業界の「職人不足」の加速という社会課題に歯止めをかけるため、2023年にマイスター高等学院を設立し、4月より開校しました。
マイスター高等学院は、高校卒業の資格を取りながら、大工など建設業における「職人」としての技術を身につけることのできる通信制高校です。これは、通常の高校では隠れてしまっている才能を見つけ、開花させる学校として機能させたいと考えています。
従来の教育システムでは、学力だけで評価されがちですが、実際には手に職を持つことに向いている子どもたちもたくさんいます。そうした子どもたちに、職人という誇りある職業への道を提供したいのです。
この取り組みは、高橋剛志が目指す「モノづくりの担い手を子供の憧れの職業にすること」を具現化するものです。将来、この学校を卒業した生徒たちが、建築業界の新しい担い手として活躍してくれることを願っています。
四方継が目指す未来
私たちが「四方継」という名前に込めた想いは、単なる理想論ではありません。これまでの歴史と経験に基づいた、実現可能な未来への道筋なのです。
建築業界は、これまで作り手の論理で動くことが多い業界でした。しかし、本当に大切なのは、住み手の幸せです。そして、その幸せを実現するためには、作り手である私たちも充実していなければなりません。協力会社の皆様との信頼関係も不可欠です。地域社会の理解と協力なくしては、持続可能な事業は成り立ちません。
この四つの要素すべてがバランス良く満たされたとき、初めて「四方良し」の状態が実現します。そして、その状態を次の世代に「継ぐ」ことができるのです。
2020年の社名変更は、この理念を明確にし、社内外に宣言するためのものでした。私たちは単なる建築事業者ではなく、「人、街、暮らし、文化を継ぐ」ことをミッションとする、未来志向の「建築×地域活性化」企業として、新たなスタートを切ったのです。
これからも、この理念を胸に、一歩一歩着実に歩み続けていきます。私たちの取り組みが、建築業界全体の発展と、地域社会の活性化に少しでも貢献できれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。四方継の想いが皆様に伝わったでしょうか。これからも、「四方良し」の実現に向けて努力を続けてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。