世代を超えて受け継がれる建築とは?四方継が目指す持続可能な家づくり

こんにちは。株式会社四方継です。

私たちは日々、「人、街、暮らし、文化を継ぎ 四方良しを実現する」という理念を掲げて、建築に向き合っています。

住宅は単なる箱物ではありません。家族の歴史を刻み、地域と共に呼吸し、次の世代へと大切に引き継がれていく器であるべきだと、私たちは考えています。

今回の記事では、四方継が考える「受け継がれる価値」とは何か、そしてどのように実現しているのかを、具体的な取り組みと共にお伝えします。

私たちが考える「四方良し」とは

四方継の「四方」とは、作り手、住み手、協力会社、地域社会の四者を指します。

この四者が健全な関係を築き、それぞれにメリットをもたらす循環を生み出すこと。これが私たちの目指す建築の形です。

作り手である私たちが技術を磨き、住み手が長く安心して暮らせる家を提供する。協力会社と共に品質を高め合い、地域社会に良い影響を与え続ける。こうした関係性こそが、建築の持続的な価値を生み出すと信じています。

私たちのビジョンは二つあります。一つは「受け継がれる価値のある丁寧なものづくり」。もう一つは「人を繋ぎ、ご縁を紡ぎ、いい街を継ぐ」ことです。

女性建築設計士と大工による細やかなコミュニケーションを通じて、単に頑丈な家を建てるだけでなく、そこに住まう人々の暮らしと、その家が立つ地域全体の未来を見据えた建築を実現しています。

建築の持続的な価値とは、物理的な耐久性だけではありません。その家が地域や文化、そして次の世代へと良好な影響を与え続ける「関係性の持続性」なのです。

未来を見据えた高性能住宅:GX志向型住宅への取り組み

世代を超えて住み継がれる家には、まず確かな性能が求められます。

私たちが積極的に取り組んでいるのが「GX志向型住宅」です。GXとは「グリーントランスフォーメーション」の略で、温室効果ガスの排出削減と経済成長の両立を実現する取り組みを指します。

具体的には、高い断熱性能を持ち、外部の気温に左右されにくい快適な室内環境を維持する家づくりです。高効率設備を導入し、住宅全体で必要となる一次エネルギー消費量を最小限に抑えます。さらに、太陽光発電などの再生可能エネルギーを取り入れることで、エネルギーを自給自足するシステムを目指しています。

この性能を実現するために、私たちが最も重視しているのが施工の丁寧さです。

工事の現場では、すき間から空気が漏れないように、断熱気密工事を徹底的に行います。この目に見えない部分の丁寧な施工こそが、将来にわたるエネルギー効率と住み心地を保証する基盤となるのです。

実は以前、私たちは「SUMIKA-ZERO(スミカゼロ)」という高性能ゼロエネルギー住宅を開発し、国土交通省のゼロエネルギー推進化住宅に認定されました。この実績は、時代の最先端を行く環境性能を追求してきた証であり、私たちの技術力の裏付けでもあります。

こうした高性能住宅は、建てた時点での快適さだけでなく、将来のエネルギーコスト上昇や気候変動にも対応できる強靭さを持っています。長い目で見れば、光熱費の削減という経済的なメリットも大きく、住まい手にとって安心の基盤となります。

自然素材を活かした建築:天然乾燥材と伝統技術

建築の持続性を語る上で、使用する素材選びは非常に重要です。

私たちは、天然の恵みを活かした素材を積極的に採用しています。例えば、愛知県で工事中の歯科クリニックでは、内部を天然乾燥の愛知県産杉材で仕上げています。

天然乾燥材は、機械乾燥とは異なり、時間をかけてゆっくりと乾燥させた木材です。環境負荷を抑えるだけでなく、木本来の美しさや香りを保ち、そこにいる人に深い安心感をもたらします。クリニックを訪れる方が「まるで自分が木の中に入ったような感覚になる」と表現されるほど、自然素材の持つ力は大きいのです。

また、特定のプロジェクトでは、「KANSO」という構法を採用しています。これはまだ一般的には広く知られていない構法ですが、スイスの建築家とも連携しながら、新しい技術や手法に挑戦しています。より長く、より安心して住み続けられるための構造的・技術的な探求です。

伝統技術にも目を向けています。左官の下地として「木摺り」という施工を行うことがあります。これは、細い木を細かいピッチで柱の両側に留める手法で、完成すれば隠れてしまう部分です。しかし、こうした見えない部分にまで手間をかけることが、建物の耐久性と品質に対する信頼性を高めるのです。

素材選びと施工の丁寧さ。この二つが組み合わさることで、時を経ても美しく、安全に住み続けられる建築が生まれます。

暮らしの変化に寄り添う柔軟な設計

家は建てた時が完成ではありません。住まい手の生活と共に成長し、変化していくものです。

世代を超えて住み継がれるためには、その時代のライフスタイルや家族構成の変化に対して、柔軟に対応できる設計が不可欠です。

現代社会では、共働き世帯が増えています。家事の負担を減らし、ストレスを軽減する「ラク家事」は、もはや贅沢ではなく必需品となっています。私たちは、時短を可能にする間取りや動線の設計を重視しています。

例えば、室内干しをメインにした洗濯計画。雨の日でも気にせず洗濯でき、花粉やPM2.5の心配もありません。キッチンから洗濯スペース、そして収納までの動線を最短にすることで、日々の家事がぐんと楽になります。

また、長期的な視点から、老後を見据えた平屋の人気が高まっています。階段の上り下りがなく、バリアフリー化もしやすい平屋は、将来の改修コストを抑え、住まい手が年齢を重ねても安心して住み続けられる基盤となります。

私たちの使命は、「住まい手がまだ気づいていない、知らない望みを形にする」ことです。これは、単なるヒアリングを超えた、専門家としての提案力と洞察力を意味します。

お客様から「ワークデスクが欲しい」というご要望をいただいた際には、3×6判の合板1枚からなるべく無駄のないように部材を取り、コンパクトで使いやすいデスクを製作しました。こうした個性に光るカスタムメイドのソリューションが、住まい手の満足度を高めます。

私たちは、計画から施工プロセスまでを見える化し、住まい手に対して安心感を提供します。家づくりの過程全体を共有することで、住まいへの愛着が増し、「この家を大切にしたい」「次の世代に受け継いでいこう」という意識が自然と生まれるのです。

地域を繋ぐ「つない堂」の取り組み

建築物が世代を超えて価値を持ち続けるためには、それを支える地域社会の存在が不可欠です。

私たちの事業の一つである「つない堂」は、信頼を軸に人と人を繋ぎ、ご縁を紡ぐメディアとしての役割を担っています。

つない堂の目的は、あらゆる分野で卓越した知見を持つ「人」「事業所」「サービス」を発掘し、リアルなネットワークを構築することです。インターネット検索を必要としない、安心安全な循環地域型社会のハブとなり、「いい街」を次世代に継ぐことを目指しています。

地域に根差した活動は多岐にわたります。

「伊川リバーフェスタ」や「西区もくいく」、「エニシミーツ」といった地域主催のイベントに積極的に参加し、地域との接点を増やしています。地域の方々と直接顔を合わせ、対話を重ねることで、信頼関係が生まれます。

「ちびっこ応援!木工教室」では、子供たちがインテリア棚やキーフックなどを自分の手で製作する機会を提供しています。ものづくりの楽しさを伝えることは、未来の担い手を育てることにも繋がります。

「しずく学習塾」の運営を支援し、卒業パーティーや進級ワークショップを開催したり、教室のお引越しに伴う支援も行っています。教育支援を通じて、地域の子供たちの成長を見守ることも、私たちの大切な役割です。

つない堂のメイン業務では、「能登半島輪島市黒島地区の伝統的建築物修復レポート」のような特集も組んでいます。これは、伝統的な建築文化を継承・修復する重要な活動であり、私たちが「文化を継ぐ」役割を果たす一例です。

これらの活動は、建築の「住み手」が安心して暮らせる地域環境そのものを整備し、建築を通じて得られた利益を地域に還元する仕組みです。こうした循環が、持続可能な社会を生み出します。

未来の担い手を育成する:マイスター高等学院と職人起業塾

どれだけ優れた設計図があっても、それを実現する技術者がいなければ、受け継がれる建築は実現しません。

私たちは、未来の建築業界の担い手を育成し、世に送り出すことに力を入れています。

その一つが「マイスター高等学院」の設立です。職人不足が叫ばれる中、私たちは高校卒業の資格を取りながら、大工など建設業における職人としての技術を身につけることのできる通信制高校を作りました。

通常の高校では隠れてしまっている才能を見つけ、開花させること。これが、マイスター高等学院の目指すところです。学業と技術習得を両立させることで、若い世代が安心してものづくりの道を選べる環境を整えています。

また、「職人起業塾」もスタートさせました。これは、社員大工のキャリアアップと地域の職人の活性化を目的とした研修事業です。職人の独立開業を進めるものではなく、イントラプレナーシップ、つまり社内起業家精神の醸成を目的としています。

ものづくりの担い手を子供の憧れの職業にすること。「人生を変える体験が人生を変える」という理念のもと、職人支援事業を全国展開しています。

この人材育成への深いコミットメントは、作り手としての技術と精神性が途切れることなく次世代に継がれることを保証するものです。技術の継承がなければ、どれだけ素晴らしい建築思想も実現できません。人を育てることが、建築を継ぐことに直結するのです。

偶数月に開催される「継塾」では、建築の枠を超えた持続可能なビジネスモデルを探求しています。例えば、ゴミの収集運搬業を営む企業のビジネスモデルを刷新し、社会課題解決型ビジネスに焦点を合わせるダイアログを行うなど、多様な視点から「継ぐ」ことの意味を深めています。

四方継が実現する「持続的な安心」のデザイン

ここまでお伝えしてきた内容を、改めてまとめてみましょう。

私たちが考える、住宅が持つべき持続的な価値とは、三つの要素が統合された「持続的な安心」のデザインです。

一つ目は、環境性能と耐久性です。GX志向型住宅に代表される、地球にも家計にも優しい高性能な構造。そして、天然素材や丁寧な施工に裏打ちされた物理的な耐久性。これらが、長く安心して住める家の土台となります。

二つ目は、生活の柔軟性です。現代の共働き世帯の課題に応えるラク家事設計や、老後を見据えた平屋計画など、ライフステージの変化に容易に対応できる柔軟な設計。住まい手の人生に寄り添い、変化し続けられる家であることが大切です。

三つ目は、地域との絆です。建築を提供する企業が、つない堂や職人育成を通じて地域社会そのものを支え、安心安全な環境を維持する力。家は地域の中に存在し、地域と共に息づくものです。

私たちは、住まい手がまだ気づいていない望みを形にするだけでなく、住まい手がその家に住み続けることが、作り手、協力会社、そして地域社会全体にとっての喜びとなるサイクルを設計しています。

この「四方良し」の精神に基づいた建築こそが、単なる一過性の流行に終わらず、文化として、そして資産として、世代を超えて大切にされ、愛され続ける「受け継がれる価値」を持つのです。

最後に:古木の盆栽のように

もし、世代を超えて受け継がれる建築を例えるなら、それは古木の盆栽のようなものです。

建てられた瞬間は若く美しい木ですが、何十年もの歳月をかけて剪定され、手入れされ、時代に合わせて器を変えながらも、その根は深く張り、樹形は唯一無二の芸術性を帯びていきます。

建築も同様です。高い基本性能と柔軟な構造を土台とし、住まい手、作り手、地域社会という「四方」の愛情と手入れが加わることで、時と共に味わい深さと価値を増していきます。

そして、文化として次の世代に大切に継がれていくのです。

株式会社四方継は、これからも「人、街、暮らし、文化を継ぐ」という理念のもと、世代を超えて愛される建築を作り続けてまいります。


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