はじめに:インターネット検索だけでは見つからない「本物の信頼」
お店を探すとき、業者を探すとき。私たちの多くは、Google検索や口コミサイトに頼っています。しかし、「評価は高かったのに、実際は期待外れだった」という経験はありませんか?
インターネット上の情報は匿名性が高く、偽のレビューや広告費による上位表示など、必ずしも信頼できるとは限りません。一方で、本当に優れた技術を持つ地域の職人さんや事業者は、情報発信が苦手なために検索しても見つからないことが多いのです。
当社の「つない堂」は、こうした現代社会の課題に対して、全く新しいアプローチで挑戦しています。それが「検索不要の安心安全な地域社会」の実現です。
つない堂とは:四方継の理念を体現する事業部門
「人、街、暮らし、文化を継ぐ」という使命
当社は「人、街、暮らし、文化を継ぎ 四方良しを実現する」という理念を掲げています。この「四方良し」とは、近江商人の「三方よし」を発展させた考え方で、以下の4者すべてが幸せになることを目指しています。
- 作り手(職人や技術者)
- 住み手(お客様)
- 協力会社(パートナー企業)
- 地域社会(コミュニティ全体)
つない堂は、この理念から生まれた「人を繋ぎ、ご縁を紡ぎ、いい街を継ぐ」というビジョンを、情報とネットワークの力で実現する事業部門です。
つない堂の役割:信頼の輪を広げる社会インフラ
つない堂が目指すのは、地域の中にある本当に優れた「人」「事業所」「サービス」を発掘し、それらをリアルなネットワークで結び、積極的な情報発信を行うことです。
たとえば、エアコンの修理が必要になったとき。インターネットで「エアコン修理 地域名」と検索する必要はありません。つない堂のネットワークを通じて、技術力が高く、人柄も信頼できる業者をすぐにご紹介できる。そんな仕組みづくりに取り組んでいます。
なぜ「検索不要」なのか:現代社会の課題
インターネット検索の限界と地域経済への影響
ネット検索で上位に表示される業者が、必ずしも優れているとは限りません。広告費をかけた業者や、見せ方の上手な業者が優先され、本当に技術力のある地域の事業者が埋もれてしまうケースが後を絶ちません。
実際、当社にはこんな相談が寄せられたことがあります。「ネットで高評価のリフォーム会社に依頼したが、職人の技術がイマイチで、アフターフォローもない」というものです。一方で、同じ地域には創業50年以上の歴史を持ち、3代に渡って地域の人々に愛され続けている工務店がありました。しかし、その工務店は情報発信が苦手で、検索では見つけられなかったのです。
こうした状況は、地域経済にも深刻な影響を与えています。本当に優れた地域の事業者が正当に評価されず、外部業者に仕事が流れることで、地域内での経済循環が断ち切られ、地域全体の活力が失われていくのです。
「循環型地域社会」という解決策
当社が提案する解決策が、「循環型地域社会」の構築です。信頼を軸とした地域内でのネットワークを作り、経済活動や生活支援が地域内で完結する仕組みです。お金も人も、地域の中で循環し続けることで、地域全体が持続的に発展していきます。
たとえば、地域の大工が家を建て、地域の電気工事士が配線工事を行い、地域の左官職人が壁を仕上げる。完成後のメンテナンスも、地域の業者が担当する。こうして、一つの家づくりに関わるすべての工程が、信頼でつながった地域の職人たちによって支えられるのです。
つない堂の3つの機能
機能1:卓越した知見の発掘(キュレーション機能)
つない堂の最初の役割は、地域に眠っている本当に価値のある資源を見つけ出すことです。
「人」の発掘
当社は創業以来、「職人による直接施工」を大切にしてきました。その過程で培った、本物の職人を見抜く目を活かして、技術力だけでなく人間性も含めて優れた職人や専門家を発掘しています。
先日出会った70歳を超える左官職人の方は、50年以上左官一筋で、特に漆喰の技術では県内屈指の腕前をお持ちです。しかし、インターネットはおろか、スマートフォンも使われていません。検索では絶対に見つからない「隠れた名職人」でした。このような方々を、地域の工務店や先輩職人のご紹介を通じて発掘し、ネットワークに組み込んでいます。
「事業所」「サービス」の発掘
個人だけでなく、地域の優れた事業所やサービスも積極的に発掘します。ここでいう「優れた」とは、単に技術力が高いだけではありません。当社の理念である「丁寧なものづくり」の精神や、「常態」(全ての成果の元になる理に向き合う姿勢)を共有できる、高い倫理観と責任感を持った事業所を重視しています。
機能2:リアルなネットワークの構築(インフラ機能)
発掘した人材や事業所を、単にリスト化するだけでは意味がありません。それらを有機的に結びつける、リアルなネットワークを構築することが重要です。
顔の見える関係づくり
定期的な勉強会や交流会を開催し、ネットワークに参加する方々が実際に顔を合わせる機会を作っています。月に1回開催している「職人交流会」では、大工、電気工事士、配管工、左官職人など、様々な職種の職人が集まり、技術の向上について話し合ったり、新しい工法について学んだりしています。
こうした場で生まれる信頼関係は、インターネット上の評価システムでは決して代替できません。実際に人柄を知り、技術を確認し、仕事に対する姿勢を理解した上で、安心して仕事を依頼できる関係を築いているのです。
「ご縁」を紡ぐシステム
当社の理念の一つに「人を繋ぎ、ご縁を紡ぐ」があります。つない堂では、このご縁を単発の取引ではなく、長期的な信頼関係として発展させるための仕組みを作っています。
たとえば、お客様が外壁塗装を必要としているとき、単に「優秀な塗装業者」をご紹介するだけではありません。お客様の家の状況、予算、ご家族構成、将来の計画なども考慮して、最適な業者をマッチングします。そして、工事完了後も、その業者とお客様の関係が継続するよう、アフターフォローやメンテナンス計画もサポートします。こうして、一つの「ご縁」が長期的な信頼関係に発展していくのです。
機能3:積極的な情報発信(メディア機能)
構築されたネットワークを維持・拡大するため、つない堂は地域の情報ハブとしての役割も果たします。
信頼に基づいた情報発信
ネットワークに参加する職人や事業所の技術、人柄、実績について、当社が実際に取材し、写真や動画を交えて詳しくご紹介しています。これは単なる宣伝ではありません。当社が実際にその方々と関わり、信頼関係を築いた上での、責任を持った推薦です。
成功事例の共有
つない堂のネットワークを通じて実現した成功事例も積極的に共有しています。最近では、築40年の古民家のリノベーションプロジェクトがありました。このプロジェクトでは、つない堂のネットワークから大工、左官、電気工事士、配管工、庭師まで、すべての職人を手配しました。
各職人が互いの技術を理解し、尊重し合いながら作業を進めた結果、施主様の予想を上回る素晴らしい仕上がりになりました。しかも、工期も予算も当初の予定内で完了したのです。このような成功事例を共有することで、ネットワークに参加する職人たちのモチベーション向上にもつながり、さらに質の高いサービス提供を促進しています。
四方良しを実現するつない堂の価値
協力会社様とのwin-winな関係
つない堂の活動は、特に「協力会社」との関係において大きな価値を提供しています。従来の下請け関係では、コストカットが最優先され、協力会社は常に価格競争にさらされていました。しかし、つない堂のネットワークでは、信頼と技術力が最優先されます。
ネットワークに参加する協力会社様は、以下のメリットを得られます。
- 営業コストの削減(紹介による受注が中心)
- 長期的な信頼関係に基づく継続受注
- 技術向上のための研修や情報交換の機会
- 同業他社との連携による大型案件への対応
実際に、ネットワークに参加している電気工事会社の社長様からは、「以前は営業に多くの時間を割いていましたが、つない堂のおかげで、本業の技術向上に集中できるようになりました。しかも、紹介される案件は質の高いお客様ばかりで、やりがいを感じながら仕事ができています」という声をいただいています。
住み手(お客様)の生涯にわたる安心
当社が提供する住宅は、「世代を超えて受け継がれる価値ある建築」を目指しています。しかし、どんなに素晴らしい家を建てても、その後のメンテナンスやトラブル対応が不安では、真の安心は得られません。
つない堂のネットワークは、お客様にとって「暮らしの安心」を担保する社会インフラとしての役割を果たします。住宅に関することだけでなく、生活全般にわたって信頼できるサービスをご提供します。
- 家電の修理や買い替えのご相談
- ガーデニングや外構工事
- お子様の教育に関するご相談
- ご高齢者の生活サポート
これらすべてにおいて、つない堂のネットワークを通じて、信頼できる専門家やサービスにアクセスしていただけます。
作り手(職人)の地位向上
つない堂の活動は、職人の社会的地位向上にも大きく貢献しています。現在の社会では、職人の技術が正当に評価されにくい状況があります。価格競争により、「安かろう悪かろう」の業者が選ばれることも少なくありません。
つない堂では、職人の技術力、経験、人間性を総合的に評価し、それに見合った対価を得られる環境を作っています。また、ベテラン職人と若手職人をマッチングし、技術の継承と人間的な成長を支援しています。
当社は「モノづくりの担い手を子供の憧れの職業にする」ことを目指していますが、つない堂の活動を通じて、職人という職業の魅力と価値を社会に発信し続けています。
つむぎ建築舎との相乗効果
当社のもう一つの事業部門である「つむぎ建築舎」は、「木と暮らしをデザイン、実現する技術者集団」として、高品質な住宅建築を手がけています。つない堂とつむぎ建築舎の連携により、大きな相乗効果が生まれています。
建築からアフターフォローまでの一貫サポート
つむぎ建築舎で家を建てられたお客様は、入居後の様々なニーズに対して、つない堂のネットワークを通じてサポートを受けることができます。新築から5年後にガーデニングを始めたくなったとき、10年後にお子様のお部屋をリフォームしたくなったとき。いつでも信頼できる専門家をご紹介できる体制が整っています。
つむぎ建築舎の特徴の一つが、女性建築設計士と大工による細やかなコミュニケーションです。この丁寧な姿勢は、つない堂のネットワークにも引き継がれ、職人とお客様との関係づくりにも活かされています。
環境配慮の輪を広げる
つむぎ建築舎が提供する「SUMIKA-ZERO」は、ゼロエネルギー住宅として環境に配慮した住宅です。つない堂では、このような環境配慮の精神を共有する事業者をネットワークに組み込むことで、地域全体の環境意識向上にも貢献しています。
未来創造企業としての責任
CSV(共通価値の創造)の実践
つない堂の「検索不要の安心安全な地域社会」構築は、社会課題解決型ビジネス(CSVモデル)の典型例です。CSV(Creating Shared Value)とは、企業が社会的価値と経済的価値を同時に創造するビジネスモデルです。つない堂の場合、地域の信頼ネットワーク構築という社会的価値の創造が、当社の事業基盤強化という経済的価値の創造に直接つながっています。
当社のビジネスモデルは、短期的な利益追求ではなく、長期的な地域社会の発展を重視しています。たとえば、つない堂がご紹介する職人や事業所からの手数料は、一般的な紹介業よりもかなり低く設定しています。その代わり、長期的な信頼関係を築き、継続的な協力関係を維持することで、安定した収益を確保しています。
次世代への継承
当社は2022年に「一般社団法人日本未来企業研究所より未来創造企業として認定」されました。この認定は、つない堂のような未来を見据えた社会貢献活動が評価されたものです。
つない堂の活動は、単に現在の地域社会を良くするだけでなく、その良い状態を次世代に継承することを目的としています。ネットワークに参加する職人や事業所には、技術の継承と人材育成への協力も求めています。年に数回開催される「技術継承ワークショップ」では、ベテラン職人が若手に技術を教え、その技術を次世代に継承するための仕組みを作っています。
まとめ:当社が描く未来の地域社会
当社の「つない堂」が目指す「検索不要の安心安全な地域社会」は、単なる理想論ではありません。これは、現代社会が抱える深刻な課題に対する、実践的で持続可能な解決策です。
つない堂は、キュレーション機能、インフラ機能、メディア機能という3つの機能を通じて、地域社会に新しいインフラを提供します。この新しいインフラにより、当社の理念である「四方良し」が実現されます。
- 作り手(職人):技術と人格が正当に評価され、安定した仕事を得られる
- 住み手(お客様):一生涯にわたって安心できるサポート体制
- 協力会社:価格競争から脱却し、技術力で勝負できる環境
- 地域社会:経済循環と文化継承が実現された持続可能なコミュニティ
2020年の株式会社四方継への社名変更で示された「地域を守り次世代に継ぐ事業を目指す」という決意。その具現化がつない堂の活動です。
当社が今構築している信頼のネットワークは、10年後、20年後の地域社会を支える重要なインフラとなるでしょう。そして、その時代の子どもたちが「この地域に住んでいて良かった」と心から思える環境を残すことが、当社の使命です。
つない堂の挑戦は、まだ始まったばかりです。しかし、一歩一歩着実に、「人を繋ぎ、ご縁を紡ぎ、いい街を継ぐ」という理想に向かって進んでまいります。