お客様の暮らしに寄り添う家具づくり ― コンパクトなワークデスクの製作事例

はじめに ― 暮らしに最適化された家具を、プロの技術でお届けする

神戸市西区でものづくり工務店「つむぎ建築舎」を運営する私たち株式会社四方継は、「人、街、暮らし、文化を継ぎ、四方良しを実現する」という企業理念のもと、住宅建築だけでなく家具製作にも力を入れています。

今回は、お客様からご要望をいただいて製作した「コンパクトなワークデスク」の事例を通じて、私たちの家具づくりへの想いと技術をご紹介します。

現代の住まいでは、リモートワークや子どもの学習スペース、家事の効率化など、さまざまな要求が空間に求められています。特に共働き世帯が増えている昨今、限られたスペースを有効活用できる家具の需要は高まる一方です。

既製品では満たせない「ちょうどいいサイズ」「この場所にぴったり収まる形」といったニーズに応えるのが、私たちのオーダーメイド家具です。住宅建築で培った設計力と施工技術を活かし、お客様一人ひとりの暮らしに最適化された家具をお届けしています。

私たちは「住まい手がまだ気づいていない、知らない望みを形にします」という哲学を大切にしています。この記事では、そんな私たちの家具づくりの実際を、具体的な事例とともに詳しくお伝えします。

製作したワークデスク ― シナ共芯合板で仕上げたコンパクト設計

お客様のご要望と完成した家具

今回製作したのは、シナの共芯合板を使用したコンパクトなワークデスクです。お客様から「自宅で仕事や作業ができる、コンパクトなデスクが欲しい」というご要望をいただき、設計から製作まで手がけました。

シナ共芯合板とは、シナの木を薄くスライスした単板を何層にも重ねて接着した合板のことです。表面が滑らかで美しい木目が特徴で、加工もしやすく、家具材として優れた性質を持っています。また、環境への配慮という観点からも、無垢材に比べて木材を効率的に使用できる素材です。

このデスクは、リビングやダイニングの一角、あるいは寝室の片隅など、限られたスペースでも設置できるよう、コンパクトな設計になっています。サイズは空間に合わせて最適化されており、圧迫感を与えることなく、しっかりと作業スペースを確保できます。

現代の暮らしに求められる機能性

共働き世帯が増えている現代では、家事の効率化が重要なテーマとなっています。家事と仕事、子どもの学習サポートを同時にこなさなければならない場面も多く、住空間には柔軟性が求められます。

コンパクトなワークデスクは、リビング学習や在宅ワークのスペースとして、家事動線の中に自然に溶け込みます。料理をしながら子どもの宿題を見守ったり、洗濯物を畳みながらパソコン作業をしたりと、複数の作業を効率よく行うための拠点となります。

私たちは、こうした現代の暮らしのリアルな課題に寄り添い、単なる「デスク」ではなく、日々の生活を支える「道具」として機能する家具を目指して設計しました。お客様の生活スタイルをヒアリングし、どんな使い方をされるのか、どんな動線の中に置かれるのかを想像しながら、細部まで検討を重ねています。

プロの技術「木取り」― 限られた資源を無駄なく活かす専門技術

910mm×1820mmの合板1枚から生まれるデスク

このワークデスクは、3×6判と呼ばれる規格の合板1枚から製作されています。3×6判とは、910mm×1820mmのサイズの合板のことで、建築や家具製作でよく使われる標準的な規格です。

私たちが特に力を入れたのが「木取り(きどり)」という技術です。木取りとは、限られたサイズの木材や合板から、必要な部材を切り出す最適な配置を考える作業のこと。この技術の精度が、コスト効率、資材の無駄の削減、そして納期の確実性を大きく左右します。

今回のデスク製作では、3×6判の合板1枚から、天板、側板、背板など必要な部材をすべて、なるべく無駄のないように配置して切り出しました。これは単なる計算だけでなく、木材の特性や加工方法、組み立て順序までを考慮した、職人の経験と知識が詰まった専門技術です。

無駄を出さない設計思想

木取りの技術は、資源を大切に使うという私たちの設計思想そのものです。住宅建築でも、構造材や内装材を無駄なく使い切ることを常に意識していますが、家具製作でも同じ姿勢で臨んでいます。

限られた資源から最大限の価値を引き出す。これは職人としての誇りであり、責任でもあります。1枚の合板を前にして、どう切り分けるのが最も効率的か、どう組み合わせるのが最も美しく仕上がるか。そんなパズルのような作業を、私たちは楽しみながら、真剣に取り組んでいます。

この木取りの技術は、一朝一夕で身につくものではありません。何度も実践を重ね、失敗から学び、先輩職人の技を受け継ぎながら、少しずつ磨かれていくものです。私たちは、こうした職人技術を次世代に継承していくことも、重要な使命だと考えています。

自然素材へのこだわり ― 木に囲まれた心地よさを家具にも

天然乾燥材がもたらす空間の質

私たちは住宅建築において、自然素材の活用を大切にしています。現在工事を進めている愛知県の歯科クリニックでは、天然乾燥の愛知県産杉材を内装に使用しています。この空間に入ると、まるで自分が木の中に入ったような感覚になるほど、木の温もりと香りに包まれます。

天然乾燥材とは、人工的な乾燥機を使わず、自然の風と時間をかけてゆっくりと乾燥させた木材のことです。機械乾燥に比べて時間はかかりますが、木の細胞が傷つきにくく、本来の香りや油分が残るため、より豊かな質感と調湿効果を持つ素材になります。

コンパクトデスクに使用したシナ共芯合板も、こうした自然素材の良さを活かせる素材として選定しました。化学的な接着剤の使用を最小限に抑えた合板を選ぶことで、室内空気環境への配慮も行っています。

見えない部分にこそ宿る品質

私たちの施工現場では、完成後に隠れてしまう部分にも妥協しません。例えば、左官の下地となる「木摺り(きずり)」という作業。これは壁の下地として細い木材を取り付ける作業ですが、完成すれば見えなくなってしまいます。

それでも、私たちの職人は「隠れてしまうのがもったいないくらい」丁寧に、美しく仕上げます。なぜなら、見えない部分の品質こそが、建物全体の耐久性や快適性を支えているからです。

この姿勢は家具製作にも通じています。デスクの裏側や接合部分など、普段は目に触れない部分も、手を抜かずに仕上げます。それが長く使える家具、本当に価値のある家具を生み出す秘訣だと、私たちは信じています。

職人を育てる仕組み ― 技術を次世代へ継承する取り組み

マイスター高等学院での人材育成

2023年4月、私たちは「マイスター高等学院」を開校しました。これは、高校卒業の資格を取得しながら、大工などの職人技術を本格的に学べる、全国でも珍しい教育機関です。

職人不足が深刻化する中、通常の教育課程では見出されにくい才能を持つ若者たちに、実践的な技術を伝える場を提供しています。座学だけでなく、実際の現場で先輩職人と共に作業することで、木取りのような高度な技術も、体験を通じて学んでいきます。

若い世代に技術を継承することは、私たちの事業の持続可能性を高めるだけでなく、日本のものづくり文化を次の時代へとつなぐ、社会的な意義も持っています。今回のようなコンパクトデスクの製作技術も、こうした教育の場で丁寧に伝えられていきます。

職人起業塾と社内起業家精神

2013年に開講し、2016年には一般社団法人として全国展開した「職人起業塾」も、私たちの人材育成の柱です。この取り組みは、職人一人ひとりが経営的な視点を持ち、社内起業家(イントラプレナー)として成長することを目指しています。

単に技術を持っているだけでなく、コスト意識、品質管理、お客様とのコミュニケーション能力を備えた職人を育てることで、より高い水準のサービス提供が可能になります。家具製作においても、材料費、工期、仕上がりの質のバランスを考えながら、最適な提案ができる人材が育っています。

こうした教育への投資は、お客様に提供する製品やサービスの質に、確実に反映されていきます。若手からベテランまで、全員が学び続ける組織文化が、私たちの強みです。

お客様との対話から生まれる価値 ― コミュニケーションを大切に

女性建築設計士と大工による細やかなヒアリング

私たちの家具づくりは、お客様との対話から始まります。女性建築設計士と大工が協力して、お客様のライフスタイルや好み、空間の使い方を丁寧にヒアリングします。

女性設計士ならではの生活者目線と、大工が持つ施工の現場感覚。この両方の視点を組み合わせることで、お客様が言葉にできない部分まで汲み取り、形にすることができます。「こんなサイズ感がいい」「こういう使い方をしたい」といったご要望を、具体的な設計に落とし込んでいきます。

今回のコンパクトデスクも、何度かのお打ち合わせを重ねて生まれました。設置する場所の採寸はもちろん、周辺の家具や動線、照明の位置なども確認しながら、最適なサイズと形状を決定しています。

プロセスの見える化による安心感

オーダーメイドの家具製作では、完成までのプロセスが見えにくいという不安があるかもしれません。私たちは、設計図面のご確認から、製作途中の進捗報告まで、できる限りプロセスを「見える化」することを心がけています。

住宅建築で実践している「専門家としての提案・計画から施工プロセスの見える化」という手法を、家具製作にも応用しています。お客様が納得し、安心してお任せいただける関係性を築くことが、私たちにとって何より大切です。

製作中に疑問や変更のご希望があれば、いつでもご相談いただけます。柔軟に対応しながら、お客様の理想により近いものを実現していきます。

長く使える家具を支えるアフターサポート

無料巡回メンテナンスサービス

私たちは2009年から、神戸近郊のお客様を対象に、無料巡回メンテナンスサービスを提供しています。「すべてのお客様に生活の安心・安全を」を合言葉に、定期的にお住まいを訪問し、住宅や家具の状態を確認しています。

家具は使い続けるうちに、ネジが緩んだり、木が乾燥して隙間ができたりすることがあります。小さな不具合のうちに対処することで、長く快適に使い続けられます。このメンテナンスサービスは、オーダーメイド家具をお届けした後も、末永くサポートし続けるという私たちの姿勢の表れです。

お客様との関係は、家具をお届けして終わりではありません。その家具がお客様の暮らしの中でどう使われ、どんな役割を果たしているか。時間が経ってからお話を伺うことで、私たちも多くの学びを得ています。

暮らし全体を見守る視点

家具は住宅の一部であり、暮らしを構成する大切な要素です。私たちは住宅建築の専門家として、一つの家具を単体で考えるのではなく、その空間全体、さらには暮らし全体の中でどう機能するかを考えます。

コンパクトデスクも、そこで過ごす時間、周囲の家具との調和、家族の動線など、さまざまな要素との関係性の中で価値を発揮します。長く使っていただく中で、ライフステージの変化に応じた調整やアドバイスもさせていただきます。

こうした長期的な視点でのサポートは、高性能住宅の建築やメンテナンスで培ってきた経験があるからこそ提供できるものです。

高性能住宅づくりで培った技術を家具製作にも

断熱気密工事の丁寧さが生む品質

私たちは2012年に、高性能ゼロエネルギー住宅「SUMIKA-ZERO(スミカゼロ)」が国土交通省のゼロエネルギー推進化住宅に認定されるなど、高断熱・高気密住宅の建築において実績を積み重ねてきました。

高性能住宅では、断熱気密工事において「すき間から空気が漏れないようにしっかり丁寧に施工する」ことが極めて重要です。わずかな隙間も見逃さず、確実に処理していく。この精密さへの要求が、私たちの施工品質全体を底上げしています。

家具製作における接合部の精度、組み立ての確実さも、こうした住宅建築で磨かれた技術の応用です。ミリ単位の精度で部材を加工し、がたつきのない、長持ちする家具を実現しています。

技術の横展開による相乗効果

住宅建築と家具製作は、使う材料や規模こそ違いますが、「木を扱う」「精密に加工する」「美しく仕上げる」という点では共通しています。私たちは両方を手がけることで、技術の相乗効果を生み出しています。

住宅建築で学んだ構造の考え方は、家具の強度設計に活かされます。家具製作で磨いた細かな造作技術は、住宅の造り付け家具や建具の精度向上につながります。お客様にとっては、住宅も家具も同じ技術者集団が一貫して手がけられる安心感があります。

こうした技術の統合は、「木と暮らしをデザイン、実現する技術者集団」という私たちの自己定義そのものです。

おわりに ― 受け継がれる価値のある丁寧なものづくり

今回ご紹介したシナ共芯合板のコンパクトなワークデスクは、私たちが大切にしている「受け継がれる価値のある丁寧なものづくり」の一例です。

3×6判の合板1枚から、無駄なく部材を取る木取りの技術。限られた空間を有効活用するコンパクト設計。現代の共働き世帯の暮らしを支える機能性。そして、長く使い続けられる品質とアフターサポート。これらすべてが、私たちの家具づくりの特徴です。

私たちは2022年に、一般社団法人日本未来企業研究所より「未来創造企業」として認定されました。これは「地域を守り次世代に継なげる事業を目指す」という私たちの理念が、社会的に評価された証です。

お客様一人ひとりの暮らしに寄り添い、本当に必要とされる家具を、プロの技術で形にする。見て安心、触れて安心できる品質を提供し続ける。それが、株式会社四方継の使命だと考えています。

コンパクトなワークデスク一つにも、私たちの技術と想いが詰まっています。もし、お住まいの空間に合わせたオーダーメイド家具をお考えでしたら、ぜひ一度ご相談ください。女性設計士と大工が、お客様の暮らしに最適な提案をさせていただきます。

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