なぜ規格化住宅?すべての人に夢のマイホームを届けるために「sumika」に込めた想い

こんにちは、株式会社四方継です。

私たちは「人、街、暮らし、文化を継ぎ四方良しを実現する」という理念のもと、お客様に喜ばれる住まいづくりを追求してきました。その歴史の中で、2007年にスタートした規格化注文住宅「sumika(スミカ)」の開発は、私たちの価値観を大きく進化させた重要な転機となりました。

今日は、なぜ私たちが規格化住宅という手法を選んだのか、その開発に込めた想いと戦略について、詳しくお話しさせていただきます。

大工集団として培った現場の経験が教えてくれたこと

私たち四方継のルーツは、1994年4月1日に神戸市西区大津和で創業した大工集団「高橋組」にあります。創業当初は大手住宅メーカーの特約工務店として活動し、厳格な品質基準と納期管理の中で、職人たちに「受け継がれる価値のある丁寧なものづくり」を徹底的に叩き込まれました。

この経験は、私たちにとって非常に大きな財産となりました。現場での施工技術を磨くだけでなく、品質を一定に保ちながら効率的に作業を進めるためのノウハウ、つまり「標準化」の重要性を深く理解することができたのです。

例えば、大手メーカーの現場では、どの職人が担当しても同じ品質を保てるように、作業手順や使用する材料、施工のポイントなどが細かく決められています。最初は「窮屈だな」と感じることもありましたが、この経験が後のsumika開発に大きく活きることになります。

2003年にリフォーム事業に進出し、職人による直接施工が反響を呼んだことで、私たちは下請け中心から元請中心の営業へと転換しました。お客様と直接向き合うようになって初めて見えてきた課題がありました。

それは、注文住宅は理想を追求できる素晴らしいものである一方で、設計や仕様が複雑化するとコストが増大し、職人の手間も増え、結果的に「夢のマイホーム」が高額になりすぎてしまうという現実でした。

私たちは考えました。高品質な建築技術を、一部の富裕層だけでなく、もっと多くの方々に届けることはできないだろうか。「すべての人に夢のマイホームを」という合言葉を実現するためには、コスト構造を根本から見直す必要があると感じたのです。

規格化という選択-自由を奪うのではなく、最適解を提供する

「規格化住宅」と聞くと、画一的で個性がないというイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私たちが目指したsumikaは、そうした従来の規格住宅とは異なるものでした。

規格化とは、自由度を奪うことではありません。むしろ、多くの住み手に共通する最も理想的な動線や空間構成を、私たちの専門知識と経験から抽出した「プロフェッショナルによる最適解」を提供することだと考えました。

2005年には2級建築士設計事務所登録を行い、確認申請業務や設計業務を充実させていました。大工としての現場の専門性に加えて、設計者としての知見も組織内で確立されていたため、規格化されたプランであっても、構造的な安全性や住みやすさを高いレベルで設計する能力が備わっていました。

私たちは常に「住まい手がまだ気づいていない、知らない望みを形にします」という哲学を大切にしています。お客様の潜在的なニーズに応えるために、実際の暮らしを深く研究してきました。

例えば、共働き家庭が増える中で「ラク家事」がいかに重要か、室内干しをメインにした設計がどれだけ日常を快適にするか、老後を見据えた平屋がどんな安心をもたらすか。こうした生活様式の変化に対応する知見は、sumika開発を通じて深められた「暮らし」への専門的研究の成果です。

規格化することで、無駄なコストや時間を削減し、適正価格で提供する。それでいて、品質は決して妥協しない。これがsumikaに込めた私たちの想いでした。

経営とマネジメントの視点を取り入れた挑戦

sumikaの開発が単なる建築商品の開発に留まらなかったのは、同時期に経営とマネジメントに関する知見の習得にも力を入れていたからです。

2007年、規格化注文住宅sumikaの開発と並行して、私たちは店舗設計やマネジメント提案の研究も兼ねて、飲食事業部を設立し、1号店をオープンしました。

「なぜ建築会社が飲食事業を?」と不思議に思われるかもしれません。これは、sumikaという規格化された商品を、どのように効率的かつ顧客満足度高く運営・販売していくかという「経営の視点」を建築事業に取り込むための、戦略的な研究活動だったのです。

飲食事業では、限られたメニュー(規格)の中でいかにお客様に満足していただくか、効率的なオペレーションをどう構築するか、スタッフをどう育成するかなど、建築業とは異なる角度から事業運営を学ぶことができました。

この経験は、建築業界の職人たちに経営的な知見を導入する後の活動にも大きく影響しました。2013年には職人起業塾を開講し、職人にイントラプレナーシップ(社内起業家精神)を醸成する研修をスタートさせました。

イントラプレナーシップとは、会社に所属しながらも起業家のように主体的に考え、行動する姿勢のことです。職人一人ひとりが経営者のような視点を持つことで、品質への責任感が高まり、お客様への提案力も向上します。

この教育プログラムは2016年には一般社団法人職人起業塾として全国展開を果たし、業界全体からも注目される取り組みとなりました。sumikaのような商品を安定的に市場に提供するためには、それを担う「作り手」の質が保証されていなければなりません。規格化住宅の開発が、職人育成へのコミットメントへと繋がっていったのです。

技術の進化は止まらない-SUMIKA-ZEROへの発展

sumikaの開発で培った「効率的な設計と高品質施工の両立」という専門性は、その後も進化を続けています。

2012年には、高性能ゼロエネルギー住宅「SUMIKA-ZERO(スミカゼロ)」が国土交通省のゼロエネルギー推進化住宅に認定されました。これは、sumikaで確立した規格化の技術をベースに、さらに高い環境性能を追求した成果です。

ゼロエネルギー住宅とは、年間で消費するエネルギー量を、太陽光発電などで創り出すエネルギー量で相殺し、実質的にエネルギー消費をゼロにする住宅のことです。高い断熱性能と気密性能、そして省エネ設備が求められます。

こうした高性能住宅を規格化することは、技術的に非常に難しいチャレンジでした。しかし、sumikaで培ったノウハウがあったからこそ、実現できたのです。私たちは一貫して高い技術水準を維持し続けています。

施工プロセスの透明性が信頼を生む

「すべての人に夢のマイホームを」という合言葉は、単なるキャッチフレーズではありません。お客様との長期的な信頼関係を築くための、具体的なサービスへのコミットメントです。

規格化によるコスト効率だけでなく、お客様の安心感を最優先に考えました。私たちつむぎ建築舎は、専門家としての提案・計画から施工プロセスの見える化まで、世代を超えて受け継がれる価値ある建築を実現することをサービスとして掲げています。

sumika開発の時代から、お客様に対して職人による直接施工の経験を活かし、施工の裏側を積極的に公開することで、品質への信頼を確立しようと努めてきました。

例えば、断熱気密工事では、目に見えない部分こそが住宅性能を大きく左右します。すき間から空気が漏れないようにしっかり丁寧に施工していく様子を公開することで、お客様に安心していただけます。完成してしまえば見えなくなる部分への品質保証が、お客様との信頼を深める鍵となるのです。

2009年には「すべてのお客様に生活の安心・安全を」を合言葉に、無料巡回メンテナンスサービスを本格化しました(神戸近郊に限ります)。

夢のマイホームの実現は、引き渡しで終わりではありません。お客様が適正価格で手に入れた高品質な住宅が、世代を超えて受け継がれる「価値ある建築」であり続けるための、私たちからの約束です。規格化によってコストダウンを図る一方で、アフターメンテナンスの手を緩めないという姿勢が、お客様との長期的なご縁を紡いでいます。

sumikaが実現した「四方良し」の形

2007年の規格化注文住宅sumikaの開発は、「すべての人に夢のマイホームを」という合言葉のもと、創業以来の経験と専門性を結集し、高品質な建築を適正価格で提供するという、市場への革新的な挑戦でした。

この開発戦略は、単にコストを抑えるだけでなく、設計とマネジメントの専門性を統合し、後の高性能住宅や職人育成という活動の基礎を築きました。

sumikaは、お客様(住み手)に「夢のマイホーム」を提供し、職人(作り手)に効率的で質の高い仕事を提供し、そして地域社会の住環境の質を高めることで、「人、街、暮らし、文化を継ぎ四方良しを実現する」という理念達成に向けた、極めて重要なプロダクトであったと言えます。

規格化住宅sumikaの開発戦略を例えるなら、伝統的な職人技を活かした「モジュール化された茶室」を造るようなものです。一つ一つが最高級の技術で丁寧に作られる一方で、最適なサイズと部品にすることで、コストを抑え、より多くの人が高い精神性を持った空間を享受できるようにしました。

これは、職人技術の価値を損なうことなく、その恩恵を広く社会に届けるための、知恵と工夫に満ちた戦略だったのです。

私たちは今後も、この精神を受け継ぎながら、より多くの方々に価値ある住まいを提供し続けていきます。高品質と適正価格の両立、そしてお客様との信頼関係を何よりも大切にしながら。

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