建築の礎を築くその瞬間は、単なる工事の始まりを告げるものではありません。それは、土地の神様に住まい手と作り手の安全を願い、これから生まれる未来の暮らしに祝福を与える、極めて神聖な儀式です。
私たち株式会社四方継は、技術者集団として、地鎮祭を「人、街、暮らし、文化を継ぎ、四方良しを実現する」という理念の具現化そのものと捉えています。
この記事では、私たちが大切にする地鎮祭における儀式への姿勢と、建築吉日に恵まれた際に見る晴れ晴れとした風景の経験談を通じて、家づくりにおける「信頼の礎」について解説します。技術と伝統がどのように融合し、世代を超えて受け継がれる価値を創造するのかをお伝えします。
儀式に託す想い:「建築吉日」を選ぶ専門性と敬意
家づくりにおいて、私たちは住まい手のまだ気づいていない、知らない望みを形にすることをミッションとしています。しかし、その望みを叶えるためには、確かな技術と計画だけでなく、土地の安寧を祈る敬意が不可欠です。
地鎮祭とは、その土地を守る神様を祀り、土地を利用させてもらうことの許しを請い、工事の安全と住まいの繁栄を祈願する儀式です。これは日本に古くから伝わる伝統的な儀式であり、現代の家づくりにおいても変わらず重要な意味を持っています。
建築吉日が示す、丁寧なものづくりの姿勢
私たちは、お客様の大切な門出となる地鎮祭を執り行う際、建築吉日を選ぶことにこだわります。
建築吉日とは、暦の上で建築に適した吉日のことを指します。単なる迷信と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、私たちにとって、これは受け継がれる価値のある丁寧なものづくりを目指すビジョンの一部なのです。
あるプロジェクト、スキップの家の地鎮祭も、この建築吉日におごそかに執り行われました。吉日を選ぶ行為は、単なる慣習ではなく、最高のタイミングで最高のスタートを切る、その意志表示でもあります。お客様にとって一生に一度の大切な家づくりだからこそ、私たちはこのような細部にまで心を配ります。
専門家として、私たちは計画から施工プロセスまでを見える化し、安心感を提供しますが、地鎮祭という伝統的な儀式は、図面や契約書では測れない、精神的な安心感を住まい手にもたらす重要なプロセスだと認識しています。これは、技術だけでなく、心の部分も大切にする、私たちの姿勢の表れです。
神聖な儀式:神主様が四方を祓う光景
地鎮祭の中でも特に印象的で重要なのが、神主様に四方を祓っていただく儀式です。
四方とは、東西南北の境界線、つまりこれから家が建つ領域全体を指します。神主様が祭壇を中心にこの四方を清めることは、その土地全体が神聖な場所となり、工事期間中の災厄が避けられ、完成後も家族が安全に暮らせるようにと祈る行為です。
この光景は、私たち作り手にとっても、身が引き締まる瞬間です。これから始まるものづくりへの責任を再確認する機会となり、改めて気持ちを引き締めます。儀式を通じて、私たちはお客様との絆を深め、共に素晴らしい家を作り上げていく覚悟を新たにするのです。
女性建築設計士と大工による細やかなコミュニケーションを通じて、私たちはこの伝統的なプロセスと最新の技術を融合させ、世代を超えて受け継がれる価値ある建築を実現しています。技術の進歩は目覚ましいものがありますが、人の心を大切にする伝統は、決して色褪せることはありません。
晴れ晴れとしたご縁:天候に恵まれる経験談
地鎮祭はしばしば屋外で行われるため、天候は重要な要素です。雨天の場合は儀式が簡略化されたり、延期されたりすることもあります。しかし、幸運にも、私たちが担当したスキップの家の地鎮祭は、大変素晴らしい天気に恵まれました。
お施主様は、大事なイベントごとはいつもいいお天気に恵まれるのだそうで、この地鎮祭の日も、文字通り雲一つない晴れ晴れとしたいいお天気でした。青空が広がり、心地よい風が吹く中での地鎮祭は、参加者全員の心に深く刻まれる素晴らしい体験となりました。
天候がもたらす信頼感と祝福
このような晴天に恵まれる経験は、単なる偶然ではなく、私たちが大切にする「ご縁」の賜物だと感じています。
私たちのビジョンの一つは、人を繋ぎ、ご縁を紡ぎ、いい街を継ぐことです。家づくりは、お施主様、設計士、大工、協力会社など、多くの人々との深い信頼関係の上に成り立っています。一つの家を建てるために、実に多くの職人や専門家が関わり、それぞれが持てる技術を発揮します。
晴天という祝福は、お施主様の持つ前向きなエネルギーと、私たちが家づくりにかける真摯な姿勢が呼応し合った結果ではないかと感じています。天気という、人の力ではどうにもならないものが味方してくれたことは、これから始まる家づくりが良いものになる予兆のようにも思えます。
地鎮祭で空気が澄み渡り、太陽の光が降り注ぐ中で行われた儀式は、参列者すべてに、清々しく、未来への希望に満ちた印象を与えます。お施主様の笑顔、神主様の厳かな祝詞、そして青い空。これらすべてが調和して、忘れられない一日となるのです。
私たちは、このような瞬間を何度も経験してきましたが、毎回新鮮な気持ちで地鎮祭に臨んでいます。それは、一つ一つの家づくりが、かけがえのない特別なものだからです。
儀式の後に続く「受け継がれる価値」の技術的担保
地鎮祭で土地を清めた後、いよいよ建築は本格化します。私たちが提供する「受け継がれる価値」は、儀式への敬意だけでなく、その後の工事における高い専門性と確かな技術によって裏打ちされます。
GX志向型住宅と精密な施工による持続性
私たちは、建物の物理的な持続性を担保するために、環境に配慮した設計を徹底しています。特に、グリーントランスフォーメーション、いわゆるGXに沿った住宅、すなわちGX志向型住宅の実現に注力しています。
GX志向型住宅とは、環境への負荷を最小限に抑えながら、快適な住環境を実現する住宅のことです。具体的には、以下の特徴を持ちます。
高い断熱性能と高効率設備の導入により、一次エネルギー消費量を削減し、温室効果ガスの排出削減と経済成長の両立を目指します。さらに、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入も視野に入れています。これにより、光熱費を抑えながら、地球環境にも優しい住まいが実現するのです。
実際、スキップの家では、上棟前の段階で断熱気密工事が真っただ中でした。この工程では、すき間から空気が漏れないようにしっかり丁寧に施工することが、将来のエネルギー効率と住み心地を大きく左右するため、非常に重要となります。
断熱気密工事は、完成後には見えなくなってしまう部分です。しかし、この「見えない部分」こそが、家の性能を決定づける最も重要な要素なのです。私たちは、この隠れてしまう部分にこそ、最大限の注意を払います。
私たちの経験では、以前に高性能ゼロエネルギー住宅であるSUMIKA-ZERO、スミカゼロを開発し、国土交通省のゼロエネルギー推進化住宅に認定された実績もあります。これは、私たちが環境技術における高い専門性を持つ証拠です。
伝統構法と未来技術の探求
儀式を重んじる姿勢は、日本の伝統的な工法への敬意にも通じます。
私たちは、左官の下地として、柱の両側に細い木を細かいピッチで留める木摺り、きずりのような、手間をかける伝統的な施工も取り入れています。木摺りは、上から左官の土が塗られるため隠れてしまいますが、隠れた部分にも丁寧な仕事を行うことが、建物の耐久性と信頼性を高めます。
現代の建築では効率化が求められますが、効率だけを追求すれば、本当に大切なものを見失ってしまいます。伝統的な手法には、長い年月をかけて培われた知恵が詰まっています。その知恵を現代に活かすことが、私たちの役割だと考えています。
また、新しい構法への挑戦も欠かしません。現在進行中のプロジェクトの中には、まだ一般的には広く知れ渡っていないKANSOという構法を採用しているものがあり、日本国内でも3棟目となる取り組みです。このプロジェクトでは、スイスの建築家とも連携するなど、国際的な知見を取り入れ、未来を見据えた技術の探求を続けています。
さらに、愛知県の歯科クリニックの工事では、内部に天然乾燥の愛知県産杉材を使用しており、まるで自分が木の中に入ったような感覚になる空間が実現しています。自然のマテリアルを活かすことは、住む人の健康を守り、環境への負荷を減らす持続可能な家づくりに繋がります。
天然乾燥の木材は、機械乾燥に比べて時間がかかりますが、木の持つ本来の性質を損なわず、香りや質感が格段に良くなります。このような素材選びも、長く愛される家づくりには欠かせない要素なのです。
地域社会との繋がりが生む「四方良し」の信頼
地鎮祭で清められた土地に建つ家は、単なる個人資産ではなく、その地域社会の一員となります。私たちが目指す「四方良し」とは、作り手、住み手、協力会社、地域社会、すべての利益が継続的に満たされる状態です。
この地域社会への深いコミットメントこそが、私たちの信頼性を担保しています。家を建てることは、その地域に新しい命を吹き込むことでもあります。
街を継ぐための「つない堂」の活動
私たちは、信頼を軸に人と人を繋ぎ、ご縁を紡ぐメディアとして「つない堂」を運営しています。つない堂は、あらゆる分野で卓越した知見を持つ人、事業所、サービスを発掘し、インターネット検索を必要としない安心安全な循環地域型社会のハブとなることを目指しています。
地域との継続的な接点を持つことで、住まい手が安心して暮らせる「いい街」を次世代に継ぐことができます。具体的な活動は多岐にわたります。
地域イベントへの参加として、伊川リバーフェスタや西区もくいくといった地域主催のイベントに積極的に参加しています。また、西区役所主催のエニシミーツ、E-NISHIと縁をかけている催しにも参加し、地域活性化に貢献しています。こうしたイベントを通じて、地域の方々と直接触れ合い、顔の見える関係を築いています。
文化の継承については、つない堂のメイン業務である「つないどう?」の特集では、能登半島輪島市黒島地区の重要伝統的建築物、修復レポートのように、伝統的な建築文化の継承に関わる重要な活動を扱っています。日本の美しい建築文化を次世代に伝えることも、私たちの大切な使命です。
教育と支援では、しずく学習塾の運営支援を行い、卒業パーティーの開催や、新年度対応、進級ワークショップの実施、教室のお引越しに伴うホームページ更新やご支援のお願いなどを通じて、地域の子どもたちの学びを支えています。子どもたちは地域の未来そのものです。その成長を支えることは、より良い未来の街づくりに直結します。
これらの活動は、私たちが建築だけでなく、地域社会そのものを大切にする姿勢を示しており、地鎮祭で清められた土地が、地域に根差した安心の上に築かれていることを証明します。
未来の担い手を育成する取り組み
建物の価値を継承するためには、それを支える技術者の存在が不可欠です。しかし現在、建設業界では深刻な職人不足が問題となっています。私たちは、この状況に歯止めをかけるため、人材育成にも尽力しています。
マイスター高等学院の設立では、高校卒業の資格を取りながら、大工など建設業における職人としての技術を身につけることのできる通信制高校を設立しました。通常の高校では隠れてしまっている才能を見つけ、開花させることを目指しています。学力だけでなく、技術力も評価される教育の場を作ることで、若い世代に新しい選択肢を提供しています。
職人起業塾の開講では、社員大工のキャリアアップと地域の職人の活性化を目的に開講した研修事業で、現在は全国展開されています。これは、職人の独立開業を進めるものではなく、イントラプレナーシップ、つまり社内起業家精神の醸成を目的とした研修です。
職人が自分の仕事に誇りを持ち、さらなる技術向上を目指す。そのような環境を整えることが、質の高いものづくりを持続させる鍵となります。
ものづくりの担い手を子供の憧れの職業にすることを目指す、これらの専門的な取り組みは、地鎮祭で祈願した安全と繁栄が、確かな技術と人材によって次世代へと継がれていくことを保証します。技術の伝承は、単に方法を教えるだけでなく、ものづくりへの情熱や誇りを伝えることでもあります。
結論:儀式と技術が織りなす「持続する安心」
私たちが建築吉日を選び、神主様に四方を祓っていただく儀式を大切にする姿勢は、単なる形式ではありません。それは、私たちが持つ「四方良し」の理念、すなわち、住まい手、作り手、協力会社、地域社会すべてに対して、持続的な安心と繁栄を提供するための決意表明です。
地鎮祭で晴天に恵まれるという経験は、お客様とのご縁の深さ、そしてこれから始まる家づくりに対する前向きな期待の表れだと受け止めています。
儀式によって精神的な安心の礎を築き、その上にGX志向型住宅や柔軟な設計、そして地域社会を巻き込んだ「つない堂」の活動という技術的・社会的な信頼性を積み重ねる。これこそが、流行に流されず、世代を超えて愛され、受け継がれていく価値を持つ建築のデザインなのです。
地鎮祭で神主様が四方を祓い清める行為は、新しい物語を書き始める前に、紙全体を神聖な光で照らすことに似ています。
その光の下で、私たちは最高のインク、つまり高性能な素材と技術、そして最高の筆、つまり熟練した職人を使い、家族の歴史という物語を紡ぎ始めます。土地を清める儀式がなければ、物語は不安定な基盤の上で揺らぎかねません。しかし、厳かに清められた土地は、何十年経っても色褪せることなく、次の世代が安心してその続きを書き加えられる、強固で美しい土台となるのです。
私たち株式会社四方継は、これからもこの理念を大切にし、お客様一人ひとりに寄り添った家づくりを続けてまいります。地鎮祭から完成、そしてその後のアフターフォローまで、すべての過程で真摯に向き合い、本当の意味で価値ある住まいを提供し続けることをお約束します。
