はじめに:認定が意味する、私たちの約束
2022年、私たち株式会社四方継は、一般社団法人日本未来企業研究所より「未来創造企業」として認定されました。
この認定は、私たちにとって大きな誇りであると同時に、より重い責任を感じる出来事となりました。なぜなら、これは単なる表彰や名誉ではなく、私たちが掲げる「人、街、暮らし、文化を継ぎ、四方良しを実現する」という理念が、第三者の目から見ても確かなものであると証明されたからです。
私たちは2020年、創立20周年を機に「有限会社すみれ建築工房」から「株式会社四方継」へと社名を変更しました。この変更には、「地域を守り次世代に継なげる事業を目指す」という強い決意が込められています。そして、その決意が形になっていることを、第三者機関が認めてくれたのです。
この記事では、未来創造企業としての認定を受けた私たちが、どのような取り組みを通じて地域社会や住まい手の皆様に貢献しているのか、その実践をご紹介します。
創業から現在まで:理念を形にする歩み
私たちの歴史は1994年の創業に始まります。2002年に法人化し、地域に根差した工務店として歩んできました。そして2009年には、無料巡回メンテナンスサービスを本格化させ、「すべてのお客様に生活の安心・安全を」という合言葉のもと、建てた後の責任も果たしてきました。
このメンテナンスサービスは神戸近郊に限られますが、十数年にわたって継続しています。なぜ無料で続けているのか。それは、家は建てて終わりではなく、そこに住まう方々の暮らしをずっと見守り続けることが、本当の「ものづくり」だと考えているからです。
2020年の社名変更は、こうした活動の集大成として、私たちの使命を明確にする節目となりました。「四方継」という名前には、作り手、住み手、協力会社、地域社会という四者すべてが持続的に発展することへの願いが込められています。
そして2022年、この理念と実践が評価され、未来創造企業として認定されました。この認定により、私たちは自分たちの活動に対してさらなる確信を持つことができ、同時に、より一層の責任を果たしていく覚悟を新たにしました。
住まい手のために:技術と健康への取り組み
未来創造企業として認定される基盤には、私たちの技術力があります。私たちは早くから高性能住宅に取り組んできました。
2012年、私たちが開発した高性能ゼロエネルギー住宅「SUMIKA-ZERO(スミカゼロ)」は、国土交通省のゼロエネルギー推進化住宅に認定されました。これは、省エネルギーと快適性を両立させた住宅として、国からお墨付きをいただいたことを意味します。
現在も私たちは、GX志向型住宅の設計を推進しています。GXとは「グリーントランスフォーメーション」の略で、温室効果ガスの排出削減と経済成長の両立を実現する取り組みのことです。具体的には、高い断熱性能と高効率設備の導入により、エネルギー消費量を削減し、さらに太陽光発電などを取り入れた住宅を指します。
私たちがこうした住宅にこだわるのは、環境問題への貢献だけが理由ではありません。高性能住宅は、光熱費の削減につながり、住まい手の経済的な負担を長期的に軽減します。つまり、環境にも家計にも優しい住まいなのです。
また、2012年からは電磁波への対策にも取り組んでいます。電磁波は目に見えないため、多くの方が気にされていませんが、長期的な健康への影響が心配されています。私たちは、住まい手の健康を守るという観点から、こうした見えないリスクにも配慮した家づくりを行っています。
現在進行中のプロジェクトでは、まだ一般的には広く知れ渡っていない特殊な構法を用いた新しい取り組みに挑戦しています。これは日本国内でも3棟目という非常に希少な計画です。正直に申し上げて、私たちにとっても初めてのことだらけで、手探りで少しずつ進めている状態です。しかし、たくさんの方々の協力をいただきながら、この先駆的な取り組みを進めています。
愛知県で工事中の歯科クリニックでは、スイスのN11 Architektenやもるくす建築社の建築家との連携によるKANSO構法を採用しています。国際的な知見を取り入れることで、私たちの技術をさらに磨き続けています。
見えない部分にこそ、誠実さを込めて
技術力だけでは、本当に良い家は生まれません。私たちが大切にしているのは、「見て安心、さわって安心」の施工です。
「スキップの家」という現場では、断熱気密工事を行っています。この工事では、すき間から空気が漏れないようにしっかり丁寧に施工することが求められます。わずかなすき間も許さない、この精度の高さが、設計通りの高性能を保証し、お客様に「見て安心」を提供します。
愛知県の歯科クリニックでは、左官の下地となる「木摺り(きずり)」という作業があります。これは最終的に塗り壁で隠れてしまう部分ですが、その美しさは「隠れてしまうのがもったいないくらい」でした。なぜ、見えなくなる部分にここまでこだわるのか。それは、隠れた部分にこそ職人の倫理観と技術が現れると考えているからです。
私たちは、女性建築設計士と大工による細やかなコミュニケーションを徹底しています。女性の設計士だからこそ気づける視点があります。たとえば、共働きのご家庭では、ラク家事は時短をかなえるサバイバルツールとして優先度が高まっています。こうした潜在的なニーズを確実に設計に反映し、施工プロセスを見える化することで、お客様との信頼関係を築いています。
「スキップの家」では、地鎮祭を建築吉日におごそかに執り行いました。また、材木を製材・プレカットする「しそうの森の木」さんへ、お施主様と一緒に見学に行きました。家づくりの節目や重要なプロセスを共有することで、お客様との絆を深めています。
未来の職人を育てる:マイスター高等学院と職人起業塾
未来創造企業としての私たちの責任は、今だけでなく、未来の建設業界全体にも及びます。
2023年4月、私たちは「マイスター高等学院」を設立・開校しました。この学校は、「職人不足の世の中、通常の高校では隠れてしまっている才能を見つけ、開花させる学校」です。高校卒業の資格を取りながら、大工など建設業における職人としての技術を身につけることができます。
なぜこのような学校を作ったのか。それは、建設業界が深刻な人手不足に直面しているからです。特に若い世代の職人が減っており、このままでは技術の継承ができなくなってしまいます。マイスター高等学院は、若い才能を発掘し、育てることで、業界全体の未来を切り開く試みなのです。
また、2016年には「職人起業塾」を一般社団法人として全国展開しました。この塾の目的は、職人の独立開業を進めることではありません。むしろ、イントラプレナーシップという社内起業家精神の醸成を目指しています。
イントラプレナーシップとは、組織の中にいながら、起業家のような視点と行動力を持つことです。職人が単に技術を磨くだけでなく、経営的な視点を持つことで、より高い専門性を発揮できるようになります。これは、組織全体の力を高め、持続可能な成長を実現するための革新的な教育哲学です。
偶数月に開催される研修会「継塾」では、協力会社や経営者を対象に、ホットシート形式でビジネスモデルの刷新やブラッシュアップを行っています。令和7年6月の継塾では、「今の時代に合わせたCSVモデル(社会課題解決型ビジネス)に焦点を合わせる」というテーマで学びを深めました。
CSVとは「Creating Shared Value(共有価値の創造)」の略で、社会課題の解決と経済成長を両立させるビジネスモデルのことです。こうした知識を協力会社と共有することで、私たちは事業全体の持続可能性を高めています。
地域とともに:つない堂と社会貢献活動
私たちの地域活動拠点「つない堂」は、「信頼の輪を広げ、検索不要の安心安全な循環地域型社会のハブ」となることを目指しています。
現代社会では、何かを知りたいときにインターネットで検索することが当たり前になっています。しかし、本当に信頼できる情報や人とのつながりは、検索では見つかりません。私たちは、リアルなネットワークと信頼を軸に、ご縁を紡ぐ活動を行っています。
つない堂では、「しずく学習塾」を運営しています。水曜日の授業日は募集人数いっぱいになるほどの盛況です。この活動を持続させるため、ホームページには「ご支援のお願い」ページを作成し、銀行振込やカード決済でご支援いただける体制を整えています。活動資金の透明性を保つことで、地域の皆様との信頼関係を大切にしています。
また、私たちは西区役所主催のイベント「エニシミーツ」(E-NISHIと縁を掛けたネーミング)に参加したほか、西区役所からのお声掛けをいただき、「伊川リバーフェスタ」や「西区もくいく」にも参加しています。地域行政との連携を深めることで、公的な場での信頼を積み重ねています。
地域の子どもたちへの支援活動も、私たちの重要な使命です。しずく学習塾や木工教室を通じて、私たちは「モノづくりの担い手を子供の憧れの職業にすること」を目指しています。子どもたちが職人という仕事に誇りと憧れを持ってくれれば、未来の建設業界はもっと明るくなるはずです。
地域情報誌「つないどう?」では、「能登半島輪島市黒島地区【重伝統的建築物】修復レポート」を掲載しました。これは、大工のかーたー石田が泊まり込みで行った活動報告です。私たちは、専門技術を災害復旧という社会貢献に活かすことで、地域を超えた責任を果たしています。
これからも、未来を創造し続けるために
2022年に一般社団法人日本未来企業研究所より「未来創造企業」として認定されたことは、私たちの理念と実践が評価された証です。
この認定の背景には、国土交通省認定の高性能住宅実績、特殊構法への挑戦といった技術力、職人育成への取り組み、そして長年にわたる無料巡回メンテナンスサービスや地域活動への献身があります。
私たちは、この第三者機関からの評価を誇りとし、これからも「受け継がれる価値のある丁寧なものづくり」というビジョンのもと、お客様、協力会社、そして地域社会全体の未来を豊かに創造していきます。
作り手良し、住み手良し、協力会社良し、地域社会良し。この「四方良し」を実現することが、私たちの使命です。そして、価値あるものを次世代へ「継なげる」ために、これからも全力で邁進してまいります。
神戸市西区で、つむぎ建築舎とつない堂を運営する私たち株式会社四方継は、未来創造企業として、皆様とともに歩み続けます。
