こんにちは。株式会社四方継です。
今日は、当社が2012年に取り組んだ重要な技術的挑戦について詳しくお話しします。それは「電磁波対策」と「高性能ゼロエネルギー住宅SUMIKA-ZERO」の開発です。
2012年、当社の転換点となった年
2012年は、当社にとって特別な年でした。この年、高性能ゼロエネルギー住宅SUMIKA-ZEROが国土交通省のゼロエネルギー推進化住宅に認定されました。技術的な大きな成果であり、当社の技術力を示す重要なマイルストーンとなりました。
同時に、当社は「電磁波への対策」という新たな取り組みも開始しました。一見すると別々のプロジェクトに見えるかもしれませんが、実はこの2つは、当社の企業理念である「人、街、暮らし、文化を継ぎ四方良しを実現する」という想いから生まれた、一つの大きな挑戦だったのです。
当社が目指すのは「受け継がれる価値のある丁寧なものづくり」です。エネルギー効率が良い家を作るだけでは不十分であり、住む人が長期間にわたって安心して暮らせる環境を整えることこそが、本当の価値ある家づくりだと考えています。
企業理念の体現としての電磁波対策
当社つむぎ建築舎の使命は「住まい手がまだ気づいていない、知らない望みを形にします」ことです。電磁波対策は、まさにこの使命を体現した取り組みでした。
現代社会では、スマートフォン、Wi-Fi、様々な電子機器に囲まれて生活しています。これらの機器は便利な反面、微弱な電磁波を発生させています。多くのお客様は電磁波について詳しく知らないかもしれませんが、家は人生の大部分を過ごす場所です。
当社は「木と暮らしをデザイン、実現する技術者集団」として、建築のプロフェッショナルとして、住まい手の皆様が気づいていない潜在的なリスクに対しても責任を持つべきだと判断しました。これが2012年の電磁波対策開始の背景にある当社の想いです。
当社の電磁波対策へのアプローチ
電磁波対策は、単に特殊な材料を使えば良いというものではありません。当社では設計段階から綿密な計画を立てています。
電気配線の配置を工夫したり、特に寝室など長時間過ごす場所に遮蔽効果のある材料を適切に配置したりします。このような作業には、女性建築設計士と大工による細やかなコミュニケーションが欠かせません。わずかな施工のずれが性能を大きく左右するため、高い技術力と正確性が求められます。
当社では、お客様との対話も重視しています。「なぜこの対策が必要なのか」「どのような効果が期待できるのか」といった疑問に、専門用語を使わずに丁寧に説明することで、お客様に十分にご理解いただき、「そこまで考えてくれているのか」と感動していただけることが多いのです。これこそが「気づいていない望み」を形にする当社の喜びです。
SUMIKA-ZERO:ゼロエネルギー住宅という革新
高性能ゼロエネルギー住宅SUMIKA-ZEROの国土交通省認定は、当社にとって大きな誇りです。ゼロエネルギー住宅(ZEH:ゼッチ)とは、住宅で消費するエネルギーと、太陽光発電などで創り出すエネルギーを差し引きして、年間のエネルギー収支をゼロ以下にする住宅のことです。
これは単純に太陽光パネルを載せれば達成できるものではありません。まず住宅自体のエネルギー消費を徹底的に抑える必要があります。断熱性能の向上、気密性の確保、高効率な設備機器の導入など、総合的なアプローチが必要です。
SUMIKA-ZERO開発の舞台裏
SUMIKA-ZERO開発当時、当社の設計チームは毎晩遅くまで議論を重ねていました。
「断熱材の厚さをあと5cm増やせば性能は上がるが、コストも上がる」「この窓の配置だと、冬の日射取得は良いが、夏の遮蔽はどうか」「換気システムの熱交換効率をもう少し上げられないか」
こうした細かい検討を何百回と繰り返しました。お客様には見えない部分ですが、当社は1%でも性能を向上させるための努力を惜しまなかったのです。
経済的メリットと社会的意義
SUMIKA-ZEROの魅力は、環境に優しいだけではありません。住まい手にとっての経済的メリットも大きいのです。
従来の住宅と比べて光熱費を大幅に削減できます。月々の電気代が半分以下になるケースも珍しくありません。住宅ローンの支払いと光熱費を合わせて考えると、トータルの住居費が安くなることもあります。
これは、当社が2007年から掲げてきた「すべての人に夢のマイホームを」という合言葉を、持続可能で経済的な形で実現したことを意味します。
また、環境負荷の低減は地域社会への貢献でもあります。一軒一軒の住宅がエネルギー自給を実現することで、地域全体のエネルギー安全保障にも寄与できます。
技術と職人の技の融合
高性能住宅と電磁波対策の両方を実現するには、最新技術と伝統的な職人の技を融合させることが不可欠です。
当社独自の設計プロセス
当社の設計プロセスは、一般的な住宅会社とは大きく異なります。まず、敷地の詳細な調査を行います。日照条件、風向き、周辺環境など、様々な要因を分析します。その上で、電磁波の発生源となる可能性のある設備や配線の位置を慎重に検討します。
同時に、ゼロエネルギーを実現するための断熱計画、日射遮蔽・取得計画、換気計画なども並行して進めます。これらすべての要素を統合して、最適な設計解を見つけ出すのが当社の仕事です。
職人の熟練技術
設計が完璧でも、施工が適切でなければ性能は発揮されません。特に電磁波対策や高断熱施工は、ミリ単位の精度が要求される場合があります。
当社の大工は、1994年創業の大工集団「高橋組」のDNAを受け継いでいます。長年培った技術に加えて、現代の高性能住宅に必要な新しい技術も習得しています。断熱材の隙間なく充填する技術、気密シートの完璧な施工技術、電磁波遮蔽材の適切な取り付け技術などです。
高性能を確実に実現するため、当社は厳格な品質管理システムを構築しています。施工の各段階で複数回のチェックを行い、性能に影響する部分は特に入念に確認します。また、お客様にも施工プロセスを見ていただけるよう、「施工プロセスの見える化」を徹底しています。
長期的な安心を支える当社のアフターサービス
高性能住宅の価値は、建築時の性能だけでは決まりません。その性能が長期間にわたって維持されることが重要です。
無料巡回メンテナンスサービス
当社は2009年から「すべてのお客様に生活の安心・安全を」を合言葉に、無料巡回メンテナンスサービスを本格化しています(神戸近郊限定)。
このサービスでは、定期的にお客様のお宅を訪問し、住宅の状態をチェックします。特に電磁波対策や断熱性能に関わる部分は、時間の経過とともに劣化する可能性があるため、注意深く点検します。電気配線の接続部分に緩みがないか、断熱材に隙間が生じていないか、換気システムが正常に動作しているかなどを確認します。
予防保全の考え方
当社のメンテナンスは「予防保全」の考え方に基づいています。つまり、問題が発生してから対応するのではなく、問題が発生する前に予防することを重視しています。
これにより、お客様は安心して長期間住み続けることができ、住宅の資産価値も維持されます。メンテナンス訪問は、技術的なチェックだけが目的ではなく、お客様との継続的な関係を築く貴重な機会でもあります。「住み心地はいかがですか」「何か気になることはありませんか」といった会話を通じて、当社も多くのことを学ばせていただいています。
人材育成:技術継承への当社の取り組み
高度な技術を持続的に提供するには、それを担う人材の育成が欠かせません。
職人起業塾の開講
2013年、当社は社員大工のキャリアアップと社内起業家精神(イントラプレナーシップ)の醸成を目的に「職人起業塾」を開講しました。
この塾では、技術の向上だけでなく、経営の知識、顧客サービスの重要性なども学びます。社員が自ら考え、新しい価値を創造する力を育成することで、組織全体の活性化と技術革新を目指しています。
マイスター高等学院の設立
2023年には、さらに一歩進んだ取り組みとして「マイスター高等学院」を設立しました。ここでは高校卒業の資格を取りながら、大工など建設業における「職人」としての技術を身につけることができます。
当社の目標は「モノづくりの担い手を子供の憧れの職業にすること」です。職人という仕事の素晴らしさ、社会的な意義を若い世代に伝えていきたいと考えています。
人材育成において重要なのは、技術の標準化と個性の両立です。基本的な技術や品質基準は統一する必要がありますが、同時に一人一人の職人が持つ個性や創意工夫も大切にしたいと考えています。この絶妙なバランスを保ちながら、次世代を担う職人を育成していくことが当社の使命です。
地域社会との連携:つない堂の取り組み
高性能住宅の価値を最大化するには、それを取り巻く地域社会も重要です。
つない堂のビジョン
当社の事業部門「つない堂」は、「信頼の輪を広げ、検索不要の安心安全な地域社会を作る」ことを目指しています。
現代社会では、何かサービスが必要になったときにインターネットで検索することが当たり前になっています。しかし、検索結果が本当に信頼できるかどうかは分からないことも多いのが現実です。
つない堂では、様々な分野で卓越した知見を持つ「人」「事業所」「サービス」を発掘し、リアルなネットワークを構築しています。医療、教育、介護、法律、金融など、生活に関わる様々な分野の専門家とのネットワークを構築し、お客様が何かでお困りのときに信頼できる専門家をご紹介できる体制を整えています。
四方継への社名変更を機に、当社が以前展開していた「すみれ暮らしの学校」の活動はつない堂に移行し、地域との連携をさらに強化しています。
循環型地域社会の実現
つない堂のビジョンは、単なるサービス紹介にとどまりません。地域の様々な事業者が相互に連携し、お金も人も地域内で循環する「循環型地域社会」の実現を目指しています。
これは当社の理念である「四方良し」(売り手良し、買い手良し、世間良し、未来良し)の具体的な実践でもあります。
社会課題解決型ビジネスモデルの構築
当社の取り組みは、単なる技術的な挑戦にとどまりません。社会課題解決型ビジネス(CSV:Creating Shared Value)モデルの実践でもあります。
継塾での探求
当社は「継塾」という勉強会を定期的に開催しています。ここでは持続可能なビジネスモデルの探求や、CSVモデルに焦点を合わせた議論を行っています。
2025年6月の継塾では、ゴミの収集運搬業を営む有限会社森衛生の川内友太氏にプレゼンをしていただきました。一見すると建築業とは関係ないように思えるかもしれませんが、地域社会の持続可能性を考えるとき、廃棄物処理は重要な課題です。
建築業の枠を超えた視点
当社は「建築×地域活性化」を事業ドメインとする未来創造企業を目指しています。そのため、建築業の枠にとらわれず、地域社会全体の課題解決に貢献できる方法を常に模索しています。電磁波対策やゼロエネルギー住宅も、この大きなビジョンの一部として位置づけています。
このような取り組みが評価され、2022年には一般社団法人日本未来企業研究所より「未来創造企業」として認定されました。この認定は、当社の技術革新が一過性のものではなく、持続的な社会価値創造につながっていることを示しています。
まとめ:継承される価値の創造
2012年に始まった電磁波対策と高性能ゼロエネルギー住宅SUMIKA-ZEROの取り組みは、当社にとって単なる技術的な挑戦ではありませんでした。それは「人、街、暮らし、文化を継ぎ四方良しを実現する」という理念を具現化する、重要な第一歩だったのです。
当社が提供する価値は、暮らしの持続可能性、安心の常態化、継承の基盤という3つの要素が統合されたものです。SUMIKA-ZEROにより環境と経済の両面から住まい手の暮らしを長期的に支えるCSVモデルを実現し、電磁波対策の導入により設計段階から安心・安全を組み込む体制を確立しました。そして高度な技術を支える職人育成と建築後の無料巡回メンテナンスを組み合わせ、技術と安心を世代を超えて受け継がれる価値として具現化しました。
当社の挑戦は続きます。技術は日々進歩し、社会の課題も変化していきます。しかし、「受け継がれる価値のある丁寧なものづくり」という当社の基本姿勢は変わりません。
常に住まい手の立場に立ち、まだ気づいていない望みを形にする。そして、それを地域社会全体の幸福につなげていく。これこそが、当社株式会社四方継の使命だと考えています。
当社は、単に家を建てる会社ではありません。お客様とご家族が、安心して快適に、そして幸せに暮らしていただける環境を、総合的に提案し、長期間にわたってサポートする会社です。
2012年に始まった電磁波対策とSUMIKA-ZEROの取り組みは、この約束を実現するための重要な基盤となっています。これからも当社は、技術革新を続け、人材育成に投資し、地域社会との連携を深めながら、真に価値ある住まいづくりに取り組んでまいります。
お客様の人生に寄り添い、未来に向けて「受け継がれる価値」を創造し続ける。それが当社四方継の決意です。